著者
中尾 彰太 成田 麻衣子 比良 英司 勝原 和博 松岡 哲也
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.521-527, 2015-06-30 (Released:2015-06-30)
参考文献数
7

大阪府泉州二次医療圏においては,改正消防法の施行に先立ち,平成21年4月より実施基準に準じた救急医療体制を構築し運用を開始したが,その後も搬送先選定困難例は増加した。この対応策として,地域メディカルコントロール協議会の検証会議において,搬送先選定困難例を個別検証し,問題点を分析した。その結果,救急医療体制自体の問題点に加え,消防の病院前活動や医療機関の受入れ対応に関する問題点が指摘され,その多くが実施基準の抵触に集約されることが明らかになった。問題点の内容は,救急医療体制の改善に資する情報として利用することを目的に,文書で関係機関に周知した。このような情報共有体制の整備により,当医療圏における搬送先選定困難例は,平成22年度の195例から,平成25年度には38例まで減少した。搬送先選定困難例の個別検証と情報共有は,問題点を明確にし,受入れ状況の改善を目指すうえで有用である。
著者
比良 英司 渡部 広明
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.39-46, 2022-06-03 (Released:2022-06-03)
参考文献数
32

超急性期の大量出血を伴う重症体幹部外傷患者の予後を規定するのは迅速で的確な止血である. Damage control surgery (DCS) における超緊急止血術は手術が主体であった時代から, より低侵襲なinterventional radiology (IVR) を併用する時代へと変化した. そして手術とIVRは “best partner” として同等に扱われる時代が到来するとともに, damage control interventional radiology (DCIR) という概念も出現し, さらにこれを安全に実施できるhybrid emergency room (hybrid ER) も登場した. これからの治療戦略は, 手術とIVRのいずれかに治療が偏ることなく, 24時間, 365日, 適切にDCSとDCIRが実施できることが求められる. この両止血戦略は一体的な提供が必要でありdamage control hemostasis (DCH) といえる戦略に包括できる. これを実施できる施設が「外傷蘇生センター」と考えられ, こうした施設を全国に適正に配置することがわが国の外傷死減少に貢献すると考える.