著者
毛利 雅子
出版者
関西外国語大学
雑誌
研究論集 (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.97, pp.225-236, 2013-03

アメリカやオーストラリアなどの通訳研究先進国では、法廷通訳人の役割、法廷内でのクライアントとの物理的位置、またクライアントの権威や権力がコミュニケーションに与える影響などに関する研究が既に進んでいる。しかし、裁判所をはじめとする法廷参与者は、依然として通訳人を単なる「言語の置き換えマシーン」と認識しているのが現状である。日本の法廷通訳人は1人で最大6人のクライアント(通訳を必要とする立場)に対応しなければならず、「言語の置き換えマシーン」としての状況はさらに厳しいものとなっている。 本研究ノートでは、Goffman の参与フレームワーク、Fairclough のゲートキーパー的役割論、Gallois らのコミュニケーション調整理論をベースに、日本とアメリカでの法廷レイアウトを用いて、日本における法廷通訳人の現状を分析すると共に、今後の課題を提示する。