- 著者
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趙 〓
水ノ上 智邦
- 出版者
- 日本人口学会
- 雑誌
- 人口学研究 (ISSN:03868311)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, pp.75-89, 2014-06-30 (Released:2017-09-12)
- 被引用文献数
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本研究の目的は,晩婚化・非婚化問題の原因解明のため,男性の結婚に焦点を当て,男性の結婚経験は雇用形態によりどのような影響を受けているのかについて「就業構造基本調査(平成19年)」(総務省)を用いて実証的に分析することである。本稿では,女性は結婚相手の選択に際し,男性の将来所得を示すシグナルを観察し,それを基に結婚を決定しているという仮説を立てる。男性の将来所得のシグナルとしては,現在の雇用形態(正規雇用,非正規雇用),初職の雇用形態,職業や学歴などが利用されると考えられる。上記仮説を,「就業構造基本調査」の個票データを用いて検証し,男性の結婚経験率に与える要因を分析した。さらに,その要因が年齢階級によってどのように変容するのかを分析している。分析結果から得られた知見は次の通りである。第1に,将来所得のシグナルである雇用形態が,全年齢階級にわたって男性の結婚経験に影響を与える。具体的には非正規雇用と非就業であることが結婚経験率を低下させる。第2に,初職の雇用形態が非正規であったことは,それ以前の世代とは異なり,バブル崩壊以後に大学を卒業した世代に対して結婚経験の確率を低下させた可能性がある。第3に,学歴は20代から30代においては将来所得のシグナルとして有効ではなく,むしろ高学歴であることは若年層において結婚のタイミングを遅らせる効果を持つことが明らかになった。