著者
水上 戴子 堀川 蘭子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.617-627, 1992-07-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
22

妊娠時のタンパク質源を植物性タンパク質のみとした場合に, 母体及び出生子の発育に及ぼす影響を検討するために, 妊娠ラットに米をベースにした食餌を投与した.タンパク質5%レベルで妊娠維持, 分娩が可能か否か, さらに出生子の発育について生後49日まで観察した.また米の1/2量を分離大豆タンパク質, 卵白アルブミン, ミルクカゼインに置き換えた場合に, 妊娠時のタンパク質栄養効果の改善がなされるか否かを検討した.精製全卵タンパク質18%食を対照群とした。結果は次の通りである.(1) 米 (R), 米+分離大豆タンパク質 (RS), 米+卵白アルブミン (RA), 米+ミルクカゼイン (RC) 群のいずれの5%タンパク質食群も, 妊娠維持, 分娩が可能であったが, R群とRS群には出生日に子が死亡する例が見られた.授乳期間中に子が死亡する割合はR群では約17%に対し, RS群では約73%と最も高く, 米の1/2量を分離大豆タンパク質に置き換えることにより, 授乳期間中の子の生存率が低下した.RA群, RC群では出生日における子の死亡はみられず, 哺育はほぼ可能であり, 米の1/2量を動物性タンパク質に置き換えることにより栄養効果の改善が認められた.(2) 出生子の発育については, 5%タンパク質食群のいずれも出生日において, 体重, 臓器重量が対照群に比べて減少した.授乳中の母体に正常食を与えることにより, 日齢がすすむにつれて対照群との差は縮小したが, 体重は生後49日まで対照群より軽量であった.(3) 5%タンパク質食群の子はいずれも出生日において, 肝臓と屠体の総DNA量, 総RNA量, 総タンパク質量が対照群より減少した.生後49日においては肝臓の総DNA量, 総タンパク質量が, RS群を除いて, 対照群より低い値を示した.
著者
木村 安美 水上 戴子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.813-823, 2008-10-15

思春期,または思春期と妊娠期のラットに食餌量を制限した場合に母体と子の発育に及ぼす影響について検討した.7週齢のWistar系雌ラットを3群に分け,ミルクカゼインと分離大豆たんぱく質をそれぞれ10%ずつ含むたんぱく質20%食を自由摂取させた群を対照群(CC群)とした.制限群とした2群のうち,思春期のみ食餌制限した群をRC群,思春期・妊娠期に食餌制限した群をRR群とした.食餌制限の方法はCC群の体重当たり平均摂取量より30%少ない量,即ち70%量を投与し,食餌制限は自由摂取群とのpairfeedingにより行った.授乳期には全群ともに自由摂取させた.得られた結果は次の通りである.1)母体への影響では,自由摂取群に比較して,思春期に食餌制限をしたRC群,思春期と妊娠期を通して食餌制限をしたRR群ともに体重増加が有意に小さかったが,妊娠維持,分娩は可能であった.RC群,RR群の1腹子当たりの出生子数はCC群より有意に低値を示した.2)思春期のみ食餌制限した場合,自由摂取群に比較して,新生子体重,臓器重量,脳中のたんぱく質,RNA,DNAの総量が低値を示し,離乳子においても体重,臓器重量,脳中コレステロール量が有意に低値を示した.離乳時までの子の生存率は73%であった.3)思春期と妊娠期に食餌制限をしたRR群では,新生子の体重がCC群,RC群より有意に軽く,臓器重量,脳と肝臓中のたんぱく質,RNA,DNAの総量および脳と肝臓のたんぱく質合成能がCC群より有意に低値を示した.離乳子においても体重,臓器重量,脳中コレステロール量はCC群より有意に低値を示した.離乳時までの子の生存率は64%であった.以上より,思春期と妊娠期を通して食餌制限をすると,母体と子の発育への影響が顕著にみられた.思春期のみの食餌制限であっても,子への影響があることが明らかになった.