著者
桒田 寛子 木村 安美 石井 香代子 山口 享子 渕上 倫子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.30, 2014 (Released:2014-10-02)

【目的】フライパンは主に炒める、焼く調理で用いるが、近年、手間や早さ等の理由から、茹でる、揚げる調理を行う際にもフライパンを使用している家庭が増加傾向にあり、メニューに対しての調理器具の固定概念が変化しつつあると推察される。使用頻度の高いフライパンを用いて、茹でるなどの調理を行い、鍋を用いたときの調理時間、調理性などと比較し、フライパン類を活用した最適メニューの提案を行うことを目的とした。 【方法】直径26cmのフライパンと直径18cmの鍋(上下2段)を用いてカボチャの煮物を同重量調理し、破断応力を測定した。また調味後の官能評価を行った。フライパン調理に最適なメニューの開発を行い、フライパンと鍋を用いて再現し、エネルギー消費量と加熱調理時間を測定した。 【結果】フライパンと鍋を比較すると、鍋の方が軟化が遅かった。また、鍋は上段と下段で煮え方が異なり、上段の方が、またカボチャの中心部の方が軟化が遅かった。調味後の官能評価において、鍋の上下段で有意差が見られた。鍋の場合、2段に分けることで味にムラができるため、フライパンの方が味が均等に染み込んだ。フライパンは、「焼く」メニューでは鍋に対し加熱調理時間が33%早く、ガス消費量は4%削減できた。これは火力を強めに設定し短時間で調理できるためと示唆された。また、「煮る」「揚げる」「茹でる」場合、フライパンでの調理が加熱調理時間で17%早く、ガスの消費量は4%削減できた。「蒸す」「炊く」場合、ガスの消費量では鍋調理が優位であった。フライパン調理の特徴として、加熱時間が短いメニューほどフライパンの優位性は増し、調理時間が長く、かつ弱火となるメニューではフライパンの優位性が低下した。
著者
木村 安美 治部 祐里 寺本 あい 桑田 寛子 渕上 倫子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.64, 2012

<b>目的</b> サワラはサバ科の回遊魚で、ばら寿司の具材に使用されるなど岡山の郷土料理に欠かせない食材である。岡山県はサワラの取扱量は全国一で、大半を県内で消費し「岡山県の魚」とも呼ばれている。本研究では岡山県におけるサワラの喫食状況の特色を明らかにするとともに、サワラを用いた郷土料理がどの程度日常食の中に溶け込んでいるのかを検討することを目的とした。<br><b>方法</b> 日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学」-魚介類の調理-(平成15年7月~平成16年9月)で得られたデータを集計、比較分析を行った。調査地区に10年以上居住している者を対象とし、全国(3,431世帯)、中国・四国(931世帯)、岡山県(380世帯)から回答を得た。得られたデータからサワラ料理を抽出し、喫食率、調理法、郷土料理について比較検討を行った。<br><b>結果</b> サワラの喫食状況は、全国44.5%、中国・四国60.3%に比較し岡山県が156.8%(複数回答)と圧倒的に高く、調理方法では、全国、中国・四国では大半を焼き物が占めるのに対し、岡山県では生ものや煮物が多い結果となった。岡山県南部では北部に比較して生もの、煮物、飯物の割合が多く、北部では焼き物の割合が高かった。飯物の内訳では、押し寿司は全国34.8%、中国・四国61.5%、岡山県0%に対し、チラシ寿司が全国13.0%、中国・四国0%、岡山県72.5%であり、南部・北部に分類すると、南部はばら寿司、北部はサバ寿司が高い結果となった。このことから、岡山県におけるサワラを用いた料理は生もので食べる習慣が今も続き、南部では瀬戸内の新鮮なサワラを用いたばら寿司、北部ではサバ寿司を食する郷土料理の伝統が結果に顕著に表れたと考えられる。
著者
山口 享子 桑田 寛子 石井 香代子 木村 安美 高橋 知佐子 治部 祐里 渕上 倫子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.165, 2013 (Released:2013-08-23)

【目的】日本各地で伝承されてきた年中行事や通過儀礼のハレの日の食事が、親から子へ伝承されない傾向にある。そこで、それらの認知状況、調理状況や食べ方、これらが変化した時期などについて調査を行い、全国レベルで比較検討し、地域性(広島県と全国の違い)を明らかにすることが本研究の目的である。【調査】平成21年12月~平成22年8月に行った日本調理科学会の行事食・儀礼食調査において、47都道府県24,858名の学生及び一般(保護者を含む)からの回答を得た。その中から、広島県に10年以上住んでいる人及び住んだことがある人858名(学生及び一般)を抽出し、お節料理について全国調査結果と比較した。【結果】年中行事を代表する正月に供される食べ物11種類の「一般」の喫食頻度(毎年食べる率)は以下の順番になった。広島県:魚料理>かまぼこ>煮しめ>黒豆>なます>肉料理>数の子>田作り>昆布巻き>だて巻き卵>きんとん。全国:かまぼこ>煮しめ>黒豆>魚料理>肉料理>数の子>なます>だて巻き卵>田作り>昆布巻き>きんとん。お節料理の喫食頻度で一番多かったのは、広島県の一般の魚料理(93.2%)で、全国の一般(81.3%)よりも多く食べていた。広島県の学生の魚料理の喫食頻度は全国とほぼ同じで、約73%の者が毎年食べると答えている。一般の最も少なかったのは広島県も全国もきんとんであった。学生が最も多く食べている物は、広島県、全国ともかまぼこであり、最も少なかったものは昆布巻きであった。家庭で作る頻度が50%以上と多いものは、煮しめ>なます>肉料理であった。
著者
木村 安美 水上 戴子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.813-823, 2008-10-15

思春期,または思春期と妊娠期のラットに食餌量を制限した場合に母体と子の発育に及ぼす影響について検討した.7週齢のWistar系雌ラットを3群に分け,ミルクカゼインと分離大豆たんぱく質をそれぞれ10%ずつ含むたんぱく質20%食を自由摂取させた群を対照群(CC群)とした.制限群とした2群のうち,思春期のみ食餌制限した群をRC群,思春期・妊娠期に食餌制限した群をRR群とした.食餌制限の方法はCC群の体重当たり平均摂取量より30%少ない量,即ち70%量を投与し,食餌制限は自由摂取群とのpairfeedingにより行った.授乳期には全群ともに自由摂取させた.得られた結果は次の通りである.1)母体への影響では,自由摂取群に比較して,思春期に食餌制限をしたRC群,思春期と妊娠期を通して食餌制限をしたRR群ともに体重増加が有意に小さかったが,妊娠維持,分娩は可能であった.RC群,RR群の1腹子当たりの出生子数はCC群より有意に低値を示した.2)思春期のみ食餌制限した場合,自由摂取群に比較して,新生子体重,臓器重量,脳中のたんぱく質,RNA,DNAの総量が低値を示し,離乳子においても体重,臓器重量,脳中コレステロール量が有意に低値を示した.離乳時までの子の生存率は73%であった.3)思春期と妊娠期に食餌制限をしたRR群では,新生子の体重がCC群,RC群より有意に軽く,臓器重量,脳と肝臓中のたんぱく質,RNA,DNAの総量および脳と肝臓のたんぱく質合成能がCC群より有意に低値を示した.離乳子においても体重,臓器重量,脳中コレステロール量はCC群より有意に低値を示した.離乳時までの子の生存率は64%であった.以上より,思春期と妊娠期を通して食餌制限をすると,母体と子の発育への影響が顕著にみられた.思春期のみの食餌制限であっても,子への影響があることが明らかになった.