著者
水原 寿里
出版者
文化女子大学
雑誌
文化女子大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.71-85, 2000-01-31

人間はその長い歴史の流れの中で, 文化や文明を発展させたが, 言葉の表現においても時代とともに変遷が見られる。社会全体が豊かになると, 言葉の表現も豊かになり, 同時に単語の窓味も多様性を帯びてくる。表の意味と裏の意味, また喩えなどにその豊かさが現れてくる。本稿の図的は, 長い歴史の潮流の中で, 文化的・政治的・社会的・宗教的な言語要因により「色」に対する中国語の用語用例がどう変遷したかを考察することにある。中国は国土が広いため, 各地域の風土・風俗習慣, また民族性などの特色が, 色彩の特色ともなって現れる。色の解釈によって, 中国語に含まれるニュアンスを正しく理解し, それを正確に使用したり, また各地域を一層よく理解したりするために, 色の言語用例に基づいて, その表層の意味(陽としての, 賛美し褒め称えるニュアンス) と,深層の慈味(陰としての, 皮肉・非難咎めのニュアンス) の二面から考察する。