著者
水島 卓磨
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.65-78, 2012 (Released:2018-04-11)

本研究では,近世からの商業資本を基に発達した大分県中津より耶馬渓に伸びていた耶馬渓鉄道と,近代以降の鉱業資本により発達した福岡県豊前市宇島より内陸部に伸びていた宇島鉄道を取り上げ,郡市町村別の株式分布と主要な株主の属性ならびに,鉄道建設後から1945(昭和20)年までの旅客・貨物輸送の実績を検討し,資金調達と輸送実績の面からみた両鉄道の性格の違いを明らかにした。その結果,資金調達では沿線外からの出資者に両鉄道の差異が見られた。耶馬渓鉄道では日田,玖珠などの延伸予定地と新潟県,関西などの遠隔地から,宇島鉄道では宇島の産業と関連が深い筑豊の鉱業家からの出資があったことが判明した。輸送実績では,通年および月ごとの輸送量の変化から両鉄道とも地域交通,耶馬渓観光そして林産資源等の輸送を担う性格が明らかになった。また,宇島鉄道では宇島の産業の趨勢と輸送に密接な関係があることも明らかになった。