著者
宮本 真由子 福田 綾 福田 裕償 福岡 寛子 横井 恵理子 大八木 知史 坪内 弘明 筒井 建紀
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.388-393, 2015

症例は32歳,3経妊未経産.稽留流産,人工妊娠中絶術による2回の子宮内容除去術後,異所性妊娠による片側卵管摘除術を経て,今回凍結胚移植により妊娠成立した.妊娠8週に性器出血にて来院し,超音波検査にて巨大絨毛膜下血腫と診断されたが,巨大絨毛膜下血腫は縮小せず,持続する性器出血により高度な貧血を呈したため入院となる.鉄剤投与により保存的に経過観察されていたが,妊娠20週にコントロール不可能な多量の出血が持続したため,妊娠継続は困難と判断,ゲメプロスト腟剤による人工妊娠中絶術を行うに至った.頸管拡張術中に再び多量出血し母体が一時ショック状態になった.児娩出後にも胎盤遺残を伴った性器出血が続いたため子宮内容除去術も行い,誘発分娩開始から胎盤娩出までの出血量は約3000ml,濃厚赤血球12単位,新鮮凍結血漿4単位を輸血した.近年,絨毛膜下血腫はIVF妊娠で血腫発症率が上昇するとの報告もあり,今回の巨大絨毛膜下血腫と大量出血の原因としてIVF妊娠が関与している可能性が考えられた.〔産婦の進歩67(4):388-393,2015(平成27年10月)〕