著者
水田 岳志
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.2J4GS1004, 2022 (Released:2022-07-11)

本報告の目的は2002年から20年の東京を対象とし、オフィス賃料とオフィス床需要の予測を行うことである。オフィス市場全体の需給にはストック・フロー恒等式という論理関係があるため、RNNによるオフィス床需要と賃料予測をストック・フロー恒等式で接続した方法を用いた。既存の方法(DiPasquale and Wheaton, 1996:DiPW)はOLSであるため景気指標を取り込むと多重共線性が発生、out-of-sampleの予測性能は低くなる。例えば、DiPWに実質GDP、失業率、日経平均株価、実質民間投資を追加しオフィス床需要を予測するとMAPE(%)は2,700となる(in-sampleのMAPEは0.00)。本報告では、動的因子により情報圧縮を行ったうえでRNNによりオフィス床需要の予測モデルを構築し、予測精度の改善を図った(MAPEは42.3)。動的因子を導入した学習済モデルをストック・フロー恒等式により接続し2021年以降のオフィス賃料と床需要を予測したところ、2019年水準を100とすれば、オフィス床需要は23年には100を上回るが、賃料指数は90ほどという結果を得た。
著者
水田 岳志
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本年度は、2006年の日本経済を対象として、全貿易財産業を対象とした貿易障壁の発生要因を明らかにするため、Protection for Sale(以下、PFS)モデルの検証を行った。PFSモデルとは全産業において発生している貿易障壁を産業ごとの利益団体による政府への政治献金行動によって説明する枠組みである。このモデルの推定及び検証作業には産業別政治献金データ、産業別貿易障壁指標及び産業別輸入価格弾力性の情報が必須である。本稿は第44回衆議院議員総選挙の翌年を分析期間とし、2005年度及び2006年度政治資金収支報告書を収集、各政党・資金団体および政治団体への企業献金・団体献金を整理した。その献金名簿から、「TSR企業情報ファイル」を用いて企業名を業種コード(JSIC.Rev.11.4桁分類)へ分類作業を行った。さらに、総務省政策統括官部局」のご厚意により。国際比較が可能な産業別データ系列も作成した。産業別貿易障壁指標に関しては、非関税障壁の度合いを反映し、かつ、経済理論的な基礎を持つ「産業別TRI」を定義し、Kee,et.al(2009)の推定結果を用い、産業別TRIを推定した。産業別輸入価格弾力性はKee,et.al(2008)が推定した貿易品目(HS88の6桁分類)ごとの輸入価格弾力性を産業レベルに集計した。全貿易産業(JIP産業分類)を対象にPFSモデルの検証を行った結果、PFSモデルが要求する符号条件を確認した。また、貿易障壁を発生させる政治構造パラメータである「政府の経済厚生ウェイト」と「貿易に関わる利益団体組織率」を計算した結果、米国等を対象とした既存研究と比較し、経済厚生ウェイトが大きく、利益団体組織率が小さいという結果を得た。以上のことから、2006年の日本政府の貿易政策決定において利益団体の与えた影響は国際比較という観点から比較的小さいと言える。