著者
小野 芳朗 小野 芳朗 水藤 寛 毛利 紫乃
出版者
岡山大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

化学物質の影響は、子供が感受性が高い。その曝露シナリオのモニタリング指標として、子供の集積する小学校の桜の葉を選んだ。桜はほとんどの小学校に植えられている。岡山市内19の小学校に許可を得て、4月から11月までの間、桜葉を採取した。得られた葉を、ひとつはチトクロームP450誘導を知るEROD活性を測定した。これらの測定に係わり、葉中の繊維を溶かすなどのテクニックを導入した。EROD活性は概して道路近傍の小学校に多い傾向がみられたが、有意な差をみることは難しかった。そこで、多環芳香族炭化水素類(Poly Aromatic Hydrocarbon : PAH)を測定した。対象とした小学校は、岡山市内を横断する国道2号線(片側3車線)をはじめ、主な国道沿いの立地や、市南部の工場地帯の立地、山間部の立地など特性をもたせた。その結果、概して道路近傍の小学校の桜葉は、PAHに汚染されていることがわかった。また南部工場地域の小学校のPAHが最も高く、移動発生源である自動車よりも国連発生源である工場の影響が強いことが示唆された。また、PAHの由来をオイルと燃料由来に分けて検討した結果、燃料由来の比量が大きく、大気中の排ガス発生源のものを桜葉が吸収していたことが明らかになった。さらに、これら桜の葉との相関をとるために、桜木の下の土壌、当該小学校における大気をサンプラーによって収集かつ近傍道路において道路近傍の大気、じんあいを採取し、これらのPAHと桜葉中のPAHの相関を求めたが、明確な相関はでず、桜葉中のPAHは、これら複数の要因の複合により形成されていることが示唆された。