著者
丸岡 直子 鈴木 みずえ 水谷 信子 谷口 好美 岡本 恵理 小林 小百合
出版者
日本転倒予防学会
雑誌
日本転倒予防学会誌 (ISSN:21885702)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.65-79, 2018-06-10 (Released:2018-08-05)
参考文献数
25
被引用文献数
3

【目的】認知症看護のエキスパートが実践している認知症高齢者に対する転倒予防ケアの臨床判断の構造とそのプロセスを明らかにすることである。【方法】認知症看護認定看護師あるいは5 年以上の認知症看護の経験を有する看護師18 名を対象に,6 名を1 グループとしたグループインタビューを実施した。インタビュー内容は,認知症高齢者に対する転倒予測と判断根拠,転倒防止策の内容であり,質的記述的に分析した。【結果】認知症看護のエキスパートは,認知症高齢者の〈安全か尊厳かのジレンマ〉に直面しながらも,〈認知症高齢者と行動を共にしてリスクを判断〉し,〈その人の持つ視点を重視しかかわる〉転倒予防ケアを実施しながら看護職員や介護職員と〈情報・ケア方法を共有するシステムをつくる〉ことを行い,認知症高齢者の病院や施設での生活が〈落ち着く〉ことを目指していた。【考察】認知症高齢者に対する転倒予防ケアの特徴は,認知症高齢者の意思を尊重し,認知症高齢者が〈落ち着く〉ことを目指したケアであった。認知症高齢者の転倒を防止するには,認知症高齢者と行動を共にしながら転倒リスクを判断し,環境適応や生活能力を維持するケアが重要であることが示唆された。【結論】認知症高齢者の転倒予防には,認知症高齢者が〈落ち着く〉ことを目指したケアの提供が重要である。
著者
高山 成子 水谷 信子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.46-55, 2001-08-31
被引用文献数
5 1

本研究の目的は中等度・重度痴呆症高齢者に残された現実認識の力を明らかにすることである. 65才以上のアルツハイマー型痴呆症高齢者5名を対象に, 研究者が生活の場でケアしながら対話した言葉を, 質的・帰納的方法で分析した.<BR>その結果, 彼らは「照れ笑い」「言い訳, 言い繕う」「自己決定する」と他者に気持ちや感情を表現する力と,「大笑いする」「繰り返し聞き返す」「気遣いをする」「口調を変えて主張する」「行動をリードする」と他者に働きかけて関係を作ろうとする力を示した.残された現実認識の力を示す中心的な概念は彼らが「他者を認識し,他者との相互作用がある」であった.<BR>本研究で明らかにされた痴呆症高齢者に残された力は, 看護者が痴呆症高齢者の残された力に眼を向けるための指標となり, また彼等の力を維持するための助けとなるかもしれない.