著者
水谷 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OIS, オフィスインフォメーションシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.45, pp.7-12, 2002-05-06

通信ネットワークは,利用者数が増すにつれて利便性が向上するサービスとして典型的な例である.この性質はネットワーク外部性と呼ばれ,クリティカル・マスに達すると普及が自動的に進行するという特性をもつ.従来から,クリティカル・マスの存在を示すモデルは提案されていたが,個人が全体の普及率にもとづいて購入意思決定するモデルとなっていた.本報告では,周囲の誰が利用しているかを考慮して購入意思決定するものとし,考慮に入れる人数および知人関係の構造がクリティカル・マスに与える影響について考察する.
著者
大田 靖 水谷 直樹
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:13498940)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.22-45, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
26
被引用文献数
3

本研究では,ファッションや映画、食品などの人間社会的流行に対して,先行研究で提案された数理モデルを基に,疫学的流行を記述する数理モデルの基礎となったSIRモデル,及びマーケティングにおけるイノベータ理論を考慮し,新しい形の流行モデルを提案した.また,一過性で終わるような流行(以下,一過性タイプの流行),及び再び盛り上がりをみせるような流行(以下,再起タイプの流行)の実データを用いて,ベイズ推定のアプローチによる提案モデルのパラメータ推定を行い,さらに,実データへのフィッティングを行った.本研究で提案されたモデルによって,再起や微細な振動を表現することが可能となり,先行研究で提案された数理モデルに比べて実データへのフィッティングにおいて,その精度を大幅に高めることができた.特に,再起タイプの流行であるKitKatや本麒麟のSNSへの投稿データにおいては,多少のずれはみられるものの,明らかに先行研究のモデルでは表現できていなかった再起や微細な振動が再現された.これらの結果から,提案モデルは人間社会的流行の変遷を説明するための便利なツールであることが結論づけられた.