著者
水野 いずみ 片桐 恵子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.506-517, 2022 (Released:2022-09-03)
参考文献数
37

現代日本の女性の就業率は, あらゆる年代で上昇している. 子育てをする女性の就労は保育所や学童保育所などの公的サポートに不足があり, 母親からのサポートが欠かせない現状である. 先行研究では, 主に時間的余裕が母親から娘への支援のリソースと説明されてきた. 本研究では, 娘が母親から受領しているサポート (金銭的, 家事・育児, 相談) と, 母親の就業状態および娘の就業状態の組み合わせとの関連について, 日本全国を対象としたランダム調査である「第3回全国家族調査 (NFRJ08) 」のデータを用いて二次分析を行った. 分析対象は, 子どもも母親もいる女性669名であった. 3種の支援区分ごとに階層的ロジスティック回帰分析を行った結果, 母親からのどのサポートについても母親と娘の就業状態の主効果は見られなかった. 相談サポートについてのみ, 交互作用効果がみられた. 有職の娘は有職の母親から, 無職の娘は無職の母親から, 相談サポートを受領しており, 母親の時間的余裕というリソースだけでは母親と娘の間のサポートの授受については捉えきれない面があると考えられた. 今後は, 母親からのサポート受領の有無だけでなく, その頻度や内容をより詳しく把握することや, 子どもがいる娘をもつ女性 - つまり母親を対象とした分析および母親と娘のペアデータによる検討を行うことが必要である.