著者
竹内 真純 片桐 恵子
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.355-374, 2020 (Released:2022-02-05)
参考文献数
135

Ageism, negative attitudes toward elderly individuals, is the third great “ism” in society. Compared to other prejudices, it is unique because most individuals will become elderly adults through aging. Therefore, the phenomenon of ageism is inherently linked to aging. However, ageism and aging studies have previously been conducted in different contexts—the former primarily in psychology and the latter in gerontology. In this paper, we classify and organize ageism research from the perspective of aging. First, we show how ageism appears in workplace, medical, and nursing care situations and in psychological research settings. Second, we present several theories explaining the occurrence of ageism, including those focusing on aging, highlighting the physical characteristics of elderly individuals, and explaining prejudice in general. Third, we present from a gerontological perspective the problem of elderly people’s adaptation to old age: we argue how ageism hinders the acceptance of old age and successful aging. Finally, we describe ageism from an aging perspective by discussing the possibility of eradicating ageism and show how ageism and aging affect each other.
著者
水野 いずみ 片桐 恵子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.506-517, 2022 (Released:2022-09-03)
参考文献数
37

現代日本の女性の就業率は, あらゆる年代で上昇している. 子育てをする女性の就労は保育所や学童保育所などの公的サポートに不足があり, 母親からのサポートが欠かせない現状である. 先行研究では, 主に時間的余裕が母親から娘への支援のリソースと説明されてきた. 本研究では, 娘が母親から受領しているサポート (金銭的, 家事・育児, 相談) と, 母親の就業状態および娘の就業状態の組み合わせとの関連について, 日本全国を対象としたランダム調査である「第3回全国家族調査 (NFRJ08) 」のデータを用いて二次分析を行った. 分析対象は, 子どもも母親もいる女性669名であった. 3種の支援区分ごとに階層的ロジスティック回帰分析を行った結果, 母親からのどのサポートについても母親と娘の就業状態の主効果は見られなかった. 相談サポートについてのみ, 交互作用効果がみられた. 有職の娘は有職の母親から, 無職の娘は無職の母親から, 相談サポートを受領しており, 母親の時間的余裕というリソースだけでは母親と娘の間のサポートの授受については捉えきれない面があると考えられた. 今後は, 母親からのサポート受領の有無だけでなく, その頻度や内容をより詳しく把握することや, 子どもがいる娘をもつ女性 - つまり母親を対象とした分析および母親と娘のペアデータによる検討を行うことが必要である.
著者
橋元 良明 木村 忠正 森 康俊 北村 智 是永 論 片桐 恵子
出版者
東京女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2018年度は、まず、先行研究の検討、既存調査の再分析、理論的検討を行なった後、(1)60歳以上の高齢者を対象とするグループ・インタビュー調査と(2)40歳から79歳までを対象に、インターネット利用を中心とする情報行動に関する質問票調査を実施した。(1)は60代70代男女各2グループ、1グループ各6名、計4グループ24名を対象に、テレビ接触状況、インターネット利用の実態、ネットを通した動画視聴、ネット利用の功罪等についてインタビューした。インタビュー対象とした24名はほとんどがネットを積極的に利用しており、退職後も趣味や地域活動にいそしむ人が多かった。ただし、対象者は、いずれも東京都文京区在住者で必ずしも一般的な60代以上を代表する人たちではないことは考慮しなければならない。(2)は、中央調査社の保有するマスターサンプルから、全国の40歳~79歳の男女1600人をランダムに抽出し、各種情報行動について質問したものである(有効回収票827)。70代について結果を見れば、70代のネット利用者は71.2%とかなり高率であるが、スマートフォン利用者は28.3%であった。また、ネット利用といっても大半がモバイル機器を通したメールだけの利用者であり、サイト・アプリの利用者(PC通しも含む)は43.4%にとどまり、いまだに年代的なデジタルでバイトが完全に解消したとはいえない状況であることが判明した。メッセージングアプリのLINEの利用者も、70代は21.8%にとどまるなど高齢者への普及は十分でなく、ネットショッピングの利用者も70代は20.3%にとどまる。そうした背景にコスト的な問題や周囲にサポートする人がいないという状況や、ネットにまつわるトラブルに大きな不安をいだいているという現状があった。
著者
片桐 恵子
出版者
日本老年社会科学会
雑誌
老年社会科学 (ISSN:03882446)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.342-353, 2013

<p> 高齢者の社会参加率は居住地域や性別により異なる.本研究では,先行研究が少ない過去の経験に着目し,過去の社会参加活動の有無や特定時期の社会参加経験が現在の社会参加と関連しているのかを地域別に検討することを目的とした.</p><p> 練馬区と岡山市の50〜69歳の男女に二段階無作為抽出法により郵送留置き調査を2008年に実施した(回収率58.9%).</p><p> 子どものころ,学生のころ,学校後,現在の社会参加歴を検討したところ,練馬区の男性ではどの時期にも不参加な人が4分の1に上った.現在の社会参加の有無についてロジスティック回帰分析を行った結果,岡山市では学校卒業後の社会参加の有無が現在の社会参加ともっとも関連が強かった.練馬区では子どもや学生のころの社会参加や経済状況や学歴など基本的属性とも関連がみられた.退職後に社会参加経験のない人が参加をするのは困難であり,大都市の退職シニアの社会参加の阻害要因のひとつであることが推測された.</p>