著者
実藤 隼人 水野 修一
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.337-341, 1992-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
14

1日10回以上の水瀉性血性下痢を主訴として来院した37歳男性の重症潰瘍性大腸炎患者に漢方療法を試み, 寛解に導入することができた。方剤の主体は人参湯であり, 出血を伴う場合には〓帰膠艾湯を加えた。漢方のみでは充分に症状の改善がみられなかった時期には, 短期間であるが, 少量のプレドニゾロン (総量265mg) を併用した。寛解に到達するまでの期間は, プレドニゾロンを主体とする従来の投薬方法に比較して遜色ないものであった。初診時より3年4ヵ月経過後も人参湯のみで再燃はみられず, 経過良好で通常通り就労している。便潜血反応 (+) の時には〓帰膠艾湯を併用している。この間サラゾピリンは全く投与されていない。人参湯のもつ抗炎症作用が潰瘍性大腸炎の再燃防止に奏効しているものと思われる。