著者
川島 眞 林 伸和 乃木田 俊辰 柳澤 恭子 水野 惇子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.7, pp.1139-1145, 2007-06-20 (Released:2014-12-03)
被引用文献数
2

アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)患者において,ステロイド外用剤等によりADの炎症が鎮静化した乾燥症状を主体とする部位を対象とし,保湿剤(ヘパリン類似物質含有製剤,以下HS)の有用性を,無処置を対照としたランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)により検討した.炎症が鎮静化した後にHSを1日2回2週間塗布し,寛解が維持された部位を有するAD患者65名をHS継続塗布群あるいは無処置群に無作為割付けし,主要評価項目を炎症の再燃までの期間とし最大6週間観察した.また,皮膚所見(乾燥・落屑)及び痒みの程度の推移を副次的評価項目とした.その結果,6週後における炎症の再燃率はHS継続塗布群で12.5%,無処置群で39.4%であり,HS継続塗布群において有意に炎症の再燃が抑制された(χ2=6.0841,p=0.0136).また,主要評価項目である炎症の再燃までの期間は,両群間に有意な差異が認められ(log rank検定,p=0.0117),HSの継続塗布により炎症の再燃までの期間が延長されることが明らかとなった.また,副次的評価項目についてもHS継続塗布群において,有意に症状の悪化が抑制された.以上より,保湿剤の使用はADの寛解維持に有用であることが示された.
著者
川島 眞 水野 惇子
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.1, no.5, pp.338-346, 2002 (Released:2010-08-25)
参考文献数
16
被引用文献数
3

アトピー性皮膚炎並びに乾皮症などに起因し, 保湿剤の外用を必要とする乾燥症状を有する患者40名に対して, 「ロコベース (R) リペア」の使用試験を実施した。本剤は, セラミド3, コレステロール, 遊離脂肪酸を配合した保湿クリームである。4週間の使用試験において, 皮膚所見の改善度及び安全度を含む有用性判定では, やや有用以上が85.0%と高い有用性を認めた。副作用は掻痒感または掻痒感の増強が3例認められ, 1例は非観察部位に使用中であった外用薬の塗布により, 1例は抗ヒスタミン薬の服用により回復した。他の1例は何ら処置を施すことなく試験期間終了後に症状が消失した。これらの結果から, 本剤はアトピー性皮膚炎や乾皮症等に起因する乾燥症状に対して有用で, 安全に適用可能な保湿クリームであることが示唆された。