著者
後藤 奈保子 調 裕次
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.1, no.6, pp.400-403, 2002 (Released:2010-08-25)
参考文献数
5

26歳, 女性。初診の約5年前より2カ月前まで定期的に近医婦人科にてピル (トライディオ-ル®) を内服していた。初診2日前に後頭部脱毛に気付き, 当クリニックを受診した。初診時に円形脱毛症と診断し, グリチロン®, セファランチン®内服, フロジン®外用にて経過をみていたが, 約2週間後に脱毛が次第に拡大してきため, 薬剤性脱毛, 内分泌異常による脱毛などを疑い血液検査を行ったところトライディオール®のDLSTが陽性であった。治療にも関わらず脱毛の拡大を認め, 脱毛の増悪の原因として薬剤も疑われた。また, 生理不順もあったため近医婦人科へ紹介した。婦人科では卵巣機能不全, 排卵障害の診断で, トライディオール®とほぼ同一の薬剤のドオルトン®を処方された。脱毛はさらに広がってくるため, 同薬剤の中止を指示した。その後脱毛は止まり, 徐々に改善した。

3 0 0 0 OA EMO症候群の1例

著者
宮田 明子 清水 隆弘 喜多野 征夫
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.19-23, 2002 (Released:2010-08-25)
参考文献数
29
被引用文献数
1

43歳, 女性。平成8年11月よりGraves病でチアマゾール内服加療中であった。平成9年5月頃より右下腿の浮腫, 硬化, および多毛を認め両下腿, 右大腿まで広がってきたため当科受診した。初診時, 両下腿・右大腿の全周にわたって浸潤を伴う褐色斑を認め, 一部表面に鱗屑を伴っていた。また, 同部に多毛と毛孔の開大を認めた。組織検査のHE染色では, 真皮乳頭層を除く上層から下層に膠原線維の離開を伴う浮腫性変化と淡い好塩基性の物質の沈着が認められ, アルシアンブルーで青く, コロイド鉄で青緑色に染色された。以上より脛骨前粘液水腫と考え, 眼球突出, 骨関節症を伴っていることからEMO症候群と診断した。
著者
清 佳浩 飯塚 正男 秋久 俊博
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.309-316, 2005

脂漏性皮膚炎患者22例を対象に,ツバキ油およびツバキ油配合シャンプーの安全性と有用性について検討した。期間は4週間,使用頻度は週2回以上とした。紅斑,湿潤,鱗屑,痂皮,掻破痕,そう痒の皮膚症状について観察した結果,全ての皮膚症状に有意な改善が見られた(p<0.01)。有用性は,やや有用以上が95%,副作用は全症例に認められなかった。<BR>脂漏性皮膚炎の発症に関る癜風菌の菌数と頭皮脂質の分析を行った。菌数は試験終了後有意に減少しており(p<0.01),頭皮脂質は炭化水素群(炭化水素,スクワレン)と遊離脂肪酸量に有意な減少がみられた(p<0.05)。癜風菌数,遊離脂肪酸量ともに減少していた症例は18例中14例あり,皮膚症状の改善もみられた。<BR>以上のことから,ツバキ油とツバキ油配合シャンプーは脂漏性皮膚炎患者の頭皮・頭髪のケア剤として有用であると考えられた。
著者
鷲見 康子 長島 千佳 曽和 順子 冨高 晶子 鶴田 京子 赤松 浩彦 松永 佳世子 大橋 正博
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.172-175, 2002 (Released:2010-08-25)
参考文献数
9

セファトリジンプロピレングリコール (CFT: セフラコール (R) ドライシロップ) によるアナフィラキーショックを経験した。患者は5歳, 女児。感冒のため近医で処方された抗菌剤 (セフラコール (R) ドライシロップ) と感冒用混合シロップを内服したところ, 約5分後に呼吸困難, 蕁麻疹, 腹痛, 尿失禁が出現した。救急車にて当院救急外来受診し, エピネフリン皮下注射, 副腎皮質ステロイド点滴により症状は軽快した。後日, 薬疹を疑い薬剤による皮膚テストを施行したところ, セフラコール (R) ドライシロップ (10%水溶液) と主成分であるCFT (1%水溶液) のオープンテストで膨疹が出現した。以上よりCFTによるアナフィラキーショックと診断した。
著者
東 禹彦
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.435-438, 2014

58歳,女性。イブA内服後に両眼瞼と口周囲に紅斑を生じたため受診した。ワセリンを基剤としたアリルイソプロピルアセチル尿素(1%濃度)を用いた皮疹部の塗布試験で陽性であった。アリルイソプロピルアセチル尿素を含む薬剤を服用しないように指導した。1年3ヶ月後にカフコデN他4剤を内服後に前回と同じ部位に皮疹を生じて受診した。1%ブロモバレリル尿素・ワセリンの皮疹部での塗布試験が陽性であった。アリルイソプロピルアセチル尿素とブロモバレリル尿素は類似の構造を示すので,交差反応をしたものと考えた。原因検索にワセリンを基剤とする塗布試験が有用であった。(皮膚の科学,13: 435-438, 2014)
著者
中川 眞知子 杉原 和子 遠藤 英樹 磯貝 理恵子 亀山 裕子 阪本 ゆり 古賀 千律子 矢島 あゆみ 手塚 正
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.176-179, 2002 (Released:2010-08-25)
参考文献数
10

45歳, 女性。初診平成10年7月2日。初診の約1カ月前からバセドウ病と診断され, 抗甲状腺剤内服治療を受けた。治療開始約1カ月前後より両下腿伸側下半分の痒みを伴った腫脹を自覚し, 次第に同部が隆起し硬くなってきたため当科紹介受診となった。初診時, 両下腿伸側に小指頭大から母指頭大までの境界不明瞭な扁平隆起した紅斑局面を認める。一部に毛孔の開大を認め, 表面は粗糖, 弾性硬で圧痕を残さない。病理組織学的所見では, 真皮網状層上層から中層にかけて粘液様物質の沈着を認め更に血管周囲に軽度の炎症細胞の浸潤を認めた。真皮膠原線維間は, alcianblue染色にて淡青色に染色され, mucicarmine染色では赤色に染色された。以上よりバセドウ病に随伴した脛骨前粘液水腫と診断した。治療は, 副腎皮質ホルモン含有軟膏の外用とステロイド局所注射を行い腫脹の軽快を認めた。完全消失はバセドウ病の軽快に伴って認められた。
著者
上埜 剣吾 荒金 兆典 浅井 睦代 川田 暁 手塚 正
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.466-470, 2004

患者は38歳,女性。急性扁桃腺炎の診断により近医でクリンダマイシンの点滴と塩酸ミノサイクリンの内服を受けたところ,多型滲出性紅斑様の皮疹が出現したため当院紹介となった。発熱と軽度の肝機能異常を伴っていた。クリンダマイシン,ミノサイクリンの使用を中止し,ホスホマイシン内服に変更したうえで,プレドニゾロン30mg/日の内服を開始したところ皮疹は改善し,発熱,肝機能も正常化した。経過中HHV-6のIgM抗体価,IgG抗体価は軽度から中程度の亢進を認めた。貼付試験を行ったところクリンダマイシン(10%,1%,0.1%)の各濃度全てに陽性反応を示し,HHV-6に誘発されたクリンダマイシンによる薬剤過敏症であると診断した。
著者
山本 篤志 後藤 典子 神吉 晴久 堀川 達弥 錦織 千佳子
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.546-550, 2009

71歳,女性。左顔面の有棘細胞癌に対して全摘術を施行した。術後,抗生剤としてセフタジジム(モダシン®)およびクリンダマイシン(ダラシン®)を投与したところ,投与後4日目に背部に無症候性の紅斑が出現した。8日目には全身に拡大し,間擦部には小膿疱が集簇してみられた。同時に38℃台の熱発と著明な乏尿を認め,血液検査では白血球とCRP,BUN,クレアチニン値の上昇を認めた。抗生剤をメロペネム(メロペン®)に変更後3日で熱発と乏尿は改善し,約10日で皮疹は検査所見とともに改善した。DLSTはモダシン®とダラシン®とも陽性であり,パッチテストはダラシン®で陽性であったことから,モダシン®およびダラシン®による急性汎発性発疹性膿疱症(acute generalized exanthenmatous pusutulosis:AGEP)および急性腎障害と診断した。
著者
川島 眞 水野 惇子
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.1, no.5, pp.338-346, 2002 (Released:2010-08-25)
参考文献数
16
被引用文献数
3

アトピー性皮膚炎並びに乾皮症などに起因し, 保湿剤の外用を必要とする乾燥症状を有する患者40名に対して, 「ロコベース (R) リペア」の使用試験を実施した。本剤は, セラミド3, コレステロール, 遊離脂肪酸を配合した保湿クリームである。4週間の使用試験において, 皮膚所見の改善度及び安全度を含む有用性判定では, やや有用以上が85.0%と高い有用性を認めた。副作用は掻痒感または掻痒感の増強が3例認められ, 1例は非観察部位に使用中であった外用薬の塗布により, 1例は抗ヒスタミン薬の服用により回復した。他の1例は何ら処置を施すことなく試験期間終了後に症状が消失した。これらの結果から, 本剤はアトピー性皮膚炎や乾皮症等に起因する乾燥症状に対して有用で, 安全に適用可能な保湿クリームであることが示唆された。
著者
笹川 征雄
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.343-349, 2004

シックハウス症候群と化学物質過敏症が同義語とされたり,シックハウス症候群を化学物質過敏症に包括する概念があったりして混乱を招いている。混迷した状況で情報が発信され,臨床診断,基礎研究にまで深刻な影響を及ぼしている。両疾患の歴史的な経緯や概念を比較し,関連研究論文や自験例の総括から,住環境との因果関係,室内の揮発性有機化合物と症状に関する量-反応関係,症状や症状の再現性,病態・発症機序の違いなどから,両疾患は明確に区別される。化学物質過敏症の発症には,社会心理学的要因が関与し,心因性や精神科疾患の関与が深いと考えられる。シックハウス症候群の定義を,「住環境による健康障害である」とした。
著者
松本 均 伊藤 恭子 米倉 久美子 市橋 正光
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.4, no.5, pp.492-497, 2005

健常人女性33名に末梢の血流改善効果を有するカシスポリフェノールを単回経口摂取させ,その後の頬部の血流に対する効果と下眼瞼中央部のくまに対する改善効果をポリフェノールを除いたプラセボとクロスオーバー二重盲検法による群間比較で評価した。プラセボ群では変化が認められないのに対し,カシス群では摂取15分後から血流量の有意な増加が見られた。同時にカシス群はプラセボ群と比較してL<SUP>∗</SUP>値の有意な上昇,エリスマインデックスの有意な上昇とメラニンインデックスの有意な減少が確認された。また,血流量変化とメラニンインデックス変化との間に逆相関関係が見られたことにより,くま発生の主要因は血流の停滞であると考えられ,カシス摂取による即効的な血流改善効果を介してくま改善効果を有する可能性が示唆された。
著者
浅野 歩 花田 圭司 田端 康一 小西 啓介
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.194-196, 2002 (Released:2010-08-25)
参考文献数
9

82歳, 女性。約1年前から気付いていた両側大陰唇の自覚症状のない径5mmまでの青褐色や黄白色の小丘疹が集簇し, 徐々に数を増すため, 当科を受診した。全ての小丘疹を切除した。病理組織学的所見はHE染色で真皮内に円形の嚢腫をみとめ, 嚢腫壁は数層の扁平上皮細胞からなり, 顆粒層を経て角化していた。嚢腫の内腔には層状の角質がみられ, 角質に混じって軟毛の断片も存在していた。嚢腫壁には脂腺の付着や肉芽腫様反応はなかった。以上の所見から, 自験例を外陰部に生じたeruptive vellus haircystsと考えた。
著者
藤村 響男
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.7, no.10, pp.A38-A44, 2008

ADは,免疫学的にはTh2ドミナントな疾患で,抗原に対するTh1/Th2応答の変動によって臨床経過が異なる。我々は以前,難治性AD患者が水痘や麻疹感染後にAD症状が数ヶ月にわたって改善する現象を解析し,この軽快現象は感染ウィルスを排除するために皮疹部において産生されたIL-12が,ダニ抗原応答性Th2細胞に作用しサイトカイン産生パターンがTh2タイプからTh1タイプにスイッチしたためと結論づけた(J Allergy Clin Immunol;100:274-282,1997)。これらを背景として今回,コンビ株式会社機能性食品事業部の協力を得てIL-12産生刺激能の強い乳酸菌株を選定し,動物実験と臨床試験によりアレルギー疾患に対する乳酸菌の効果を検討した。
著者
橋本 健
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.9, no.6, pp.563-567, 2010

昨年10月に手塚正名誉教授より本講演の依頼を受けた時,オバマ改革は早急に実現するものと思われた。しかし実際は3月18日の講演当日になっても上院は一応通過したものの下院で必要とされる1/3の票を未だ集めるのに到っていなかった。共和党の反対は理解できるが与党の民主党からも反対が出て手こずっていた。3月22日にやっと下院を7票の僅差で通過したが,まだ上院とのすり合わせが残っている。さらに反対法案の提出や州政府の反対も実際に起こりつつある。屡々アメリカの後を追う日本の官僚や政治家が,この改革案を読めば,現状が如何にひどいか分かるはずであるが,健保の商業化,HMO,primary care など,アメリカで失敗したシステムを輸入しようとした連中を監視する必要がある。以下オバマ氏の演説を骨子として,改革の概要をまとめた。(皮膚の科学,9: 563-567, 2010)
著者
宍戸 悦子 塚原 和枝 藤村 努 森脇 繁 武馬 吉則 川島 眞 芋川 玄爾
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.1, no.5, pp.355-362, 2002

角層保水効果および角層柔軟化効果を有する, アミジノ-L-プロリン (ALP) を配合した処方の, 目尻の小じわに対する改善効果を, ALPのみを除いたプラセボと比較した。健常人女性40名の目尻に5%ALP配合処方もしくはプラセボを1日2回, 6週間塗布し, 塗布開始前と6週間後に比較検討を行った。その結果, しわの写真基準判定において, プラセボ処方群では変化が認められないのに対し, ALP配合処方群では有意な小じわの改善が認められた。またALP配合処方群のみ, 皮膚弾力性と角層水分量の有意な上昇が認められた。以上の結果より5%ALP配合処方は, 目尻の小じわの改善作用を有することが明らかとなった。(皮膚の科学, 1: 355-362, 2002)
著者
稲葉 豊 金澤 伸雄 古川 福実
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.26-30, 2013

34歳,女性。頭痛に対して鎮痛薬を使用したところ口唇の腫脹を生じた。数ヶ月後に別の鎮痛薬を使用したところ,上下口唇と手背の水疱および手指の紅斑を生じ,色素沈着を残した。両薬剤に共通な成分であるアリルイソプロピルアセチル尿素 (Allylisopropylacetylurea,AIAU),イブプロフェン,無水カフェインのいずれかによる固定薬疹を疑い,これらの成分に対して無疹部でのクローズドパッチテストを行ったがすべて陰性であった。そのため上下口唇の色素沈着部に AIAU とイブプロフェンをそれぞれ20%含有するワセリンを単純塗布すると,5分後に紅斑が出現した。また無水カフェインの口唇色素沈着部への,AIAU の手背色素沈着部への単純塗布はそれぞれ陰性であった。本症例は皮膚粘膜移行部の固定薬疹であり,同部でのオープンパッチテストは結果が早く得られ,安全で有用性の高い検査法であった。(皮膚の科学,12: 26-30, 2013)
著者
長町 美野子 土岐 真理子 勝田 潤子 荻野 篤彦
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.28-31, 2003

脂漏性角化症は中高年に生じる良性表皮腫瘍で,加療しないかぎり通常は消退することはない。しかし,ときに炎症症状を呈して数日後に自然脱落することが知られている。Bermanらによると脂漏性角化症の自然消退には,1)表皮塊がねじれ摘ままれて乳頭状となって脱落するもの,2)偽性角質嚢疱が病変の中を貫いて脱落するもの,3)真皮上層の単核球の浸潤が関与して脱落するもの,の3型があるという。自験例は(1)の形式に相当するものと思われる。
著者
上原 正巳
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.65-75, 2014

アトピー性皮膚炎患者に主要アレルギー性食物(卵,牛乳など)の経口投与試験をおこなうと,湿疹の悪化が起こる患者は少数(10%以下)であることから,食物は本症の重要な悪化因子ではないと考えられてきた。最近筆者らは従来の研究を補完するつもりで,患者が摂取するすべての食物を研究対象に含めて投与試験をおこなった。その結果,不定期的湿疹悪化を示す成人患者の44%と小児患者の75%,および母乳栄養の乳児患者の73%において,主要アレルギー性食物以外の食物(とくに木の実食品と発酵食品)が湿疹を悪化させていることが判明した。以上から,食物(とくに木の実食品と発酵食品)は本症の重要な悪化因子であると考えられる。(皮膚の科学,13: 65-75, 2014)