著者
水間 豊 佐々木 宏
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.262-270, 1974
被引用文献数
3 1

日本短角種の登録事業が開始された昭和32年から47年までに本登録された,輸入種牛を除く種雄牛60頭および種雌牛349頭の群について,時期別にわけて産地別内訳を明らかにし,祖父母までの系図から近交係数および血縁係数を計算するとともに,時期別標本牛群に対する特定種牛の遺伝的寄与率および奥羽種畜牧場の遺伝的寄与率をWIENERの方法を用いて分析した.主な結果は次の通りである.1. 年度の進行に伴なって本登録牛の数は顕著に増加しているが,全登録頭数に対する比率は0.5~1.0%程度であった.全期間の種雄牛の登録頭数は青森県8,岩手県18,秋田県12であり,種雌牛のそれはこの順に137,48,86であった.また農林省奥羽および十勝種畜牧場生産牛は雄22頭,雌78頭で全登録頭数に対する比率が高いことが注目された.外国からの輸入種牛で本登録されたものは雄8,雌2の計10頭である.2. 種雄牛群の全期間での近交係数は1.25%,種雌牛群のそれは0.54%であり,雄•雌両群とも各期内での血縁係数はかなり高いことが明らかにされた.3. 昭和30年以後に輸入された外国産種雄牛の遺伝的寄与率の合計は種雄牛群に対して14.13%であり,種雌牛群では時期の進むに従って低くはなるが,全期間でみると8.38%であった.特に大きい貢献をした種雄牛は昭和30年に輸入されたホイートランド•パンジョー号(雄群に対して6.67%,雌群に対して4.58%)と昭和31年に輸入されたホイートデール•レディアント•クレスト号(雄群2.92,雌群3.44)であった.4. 国内産種牛で遺伝的寄与率が両群に対して3%以上のものをみると,奥羽種畜牧場産もしくは奥羽で繋養されている種牛が多いことが明らかにされた.種雄牛では笹川,山桜,道雲号であり,種雌牛はしもあい号である.5. 奥羽種畜牧場の生産種牛の遺伝的寄与率は,種雌牛群に対して36.74%,種雄牛群に対して42.92%であることを示すとともに,日本短角種の改良に奥羽種畜牧場の果している役割について考察した.
著者
口田 圭吾 八巻 邦次 山岸 敏宏 水間 豊
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.121-128, 1992
被引用文献数
1 1

牛枝肉規格は,牛肉の価値を判断する上で重要な指標となるが,その判定は,スタンダードを基準にしているものの,肉眼的方法により行なわれている,また,脂肪交雑の粒子の大きさおよび形状なども,肉質の判定において重要な要因となっている.本研究では,それらの形質をコンピュータ画像解析により数値化する方法を検討した.また,1975年から1988年までの14年間に実施された,黒毛和種および日本短角種産肉能力間接検定時に撮影されたロース芯断面の写真に対して,開発した方法を適用し,得られた画像解析値に関する遺伝的パラメータを算出し,従来の格付による評価値と画像解析値との比較を行なった.遺伝的パラメータの推定にはHARVEYのLSMLMW(1986)を使用し,要因として年次-検定場,年次-検定場内種雄牛および検定開始時日齢への1次および2次の回帰をとりあげた.黒毛和種および日本短角種のロース芯断面内脂肪割合はそれぞれ7.88%,5.18%であり品種間の有意性が認められた.また,脂肪交雑粒子の大きさを示す面積値および形を表す形状値は両品種で有意差が認められなかった.画像解析で算出したロース芯断面内脂肪割合の遺伝率は黒毛和種が1.09,日本短角種が0.45であった.画像解析で算出した脂肪割合と格付による脂肪交雑評点との間の表型相関は,黒毛和種が0.63と比較的高かったものの,日本短角種では0.14と非常に低い値を示した.このことは,脂肪交雑程度が低い品種に対する肉眼による格付の難しさを示唆しているものと考えた.