著者
梶村 達人 前岡 庸介 I Nyoman WIDIARTA 須藤 猛 日鷹 一雅 中筋 房夫 永井 一哉
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.137-144, 1993-08-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
11
被引用文献数
15 19

イネの有機栽培がウンカ・ヨコバイ類の個体群密度に与える影響を明らかにするために,岡山県立農業試験場の化学肥料区,有機肥料区,無肥料区および岡山市の有機栽培田で発生密度の調査を行った。1) 有機栽培田ではツマグロヨコバイの密度が各世代とも極めて低かった。このことは,有機栽培田が乾田直播地帯にあり,冬期の耕起のためツマグロヨコバイの侵入世代密度が地域的に低かったことによると考えられた。2) 有機栽培田におけるセジロウンカの侵入世代密度は他の区と同程度であったが,その後の増殖率は著しく低く,第1世代幼虫期以降の密度は他の区に比べ著しく低くなった。3) トビイロウンカ第3世代幼虫の密度は有機栽培田で最も低かった。このことは侵入世代成虫の密度が有機栽培田で低かったことに起因すると推測された。4) 天敵類の密度は有機栽培田で特に高い傾向は認められなかったことから,ウンカ類の密度が有機栽培田で最も低くなった原因は天敵以外の要因によると示唆された。
著者
永井 一哉
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.269-274, 1991
被引用文献数
7 27

室内実験において,露地栽培ナスの主要な害虫であるミナミキイロアザミウマ,カンザワハダニおよびワタアブラムシに対するハナカメムシの捕食量および餌選択を調べた。<br>1) ハナカメムシ雌成虫はミナミキイロアザミウマ成幼虫,カンザワハダニ雌成虫およびワタアブラムシ幼虫を捕食したが,ミナミキイロアザミウマの卵は捕食しなかった。ミナミキイロアザミウマ2齢幼虫を与えた場合,ハナカメムシ1齢幼虫,3齢幼虫,5齢幼虫および雌成虫の25&deg;C, 16L-8Dにおける24時間当りの捕食量はそれぞれ3, 11, 13および22匹であり,ミナミキイロアザミウマ成虫を与えた場合,ハナカメムシ雌成虫の捕食量は26匹であった。<br>2) 同じ条件下で,ハナカメムシ雌成虫はカンザワハダニ雌成虫を21匹,ワタアブラムシ1齢幼虫を12匹,4齢幼虫を6匹捕食した。<br>3) 孵化直後からカンザワハダニで飼育したハナカメムシ雌成虫にミナミキイロアザミウマ2齢幼虫とカンザワハダニ雌成虫とを同時に与えた場合はミナミキイロアザミウマが,カンザワハダニ雌成虫とワタアブラムシ4齢幼虫とを同時に与えた場合はカンザワハダニが先に捕食される確率が高かった。<br>ワタアブラムシで飼育したハナカメムシ雌成虫にミナミキイロアザミウマ2齢幼虫,ワタアブラムシ4齢幼虫およびミナミキイロアザミウマ2齢幼虫,ワタアブラムシ1&sim;2齢幼虫を2種ずつ同時に与えた場合では,最初に捕食される確率はどちらもミナミキイロアザミウマが高かった。<br>野外から採集したハナカメムシ雌成虫にミナミキイロアザミウマ2齢幼虫,カンザワハダニ雌成虫およびワタアブラムシ4齢幼虫を2種ずつ同時に与え餌選択を調べた結果,最初に捕食される確率はミナミキイロアザミウマが最も高く,次いでカンザワハダニとなり,ワタアブラムシが最も低かった。
著者
永井 一哉
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.269-274, 1991-11-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
14
被引用文献数
26 27

室内実験において,露地栽培ナスの主要な害虫であるミナミキイロアザミウマ,カンザワハダニおよびワタアブラムシに対するハナカメムシの捕食量および餌選択を調べた。1) ハナカメムシ雌成虫はミナミキイロアザミウマ成幼虫,カンザワハダニ雌成虫およびワタアブラムシ幼虫を捕食したが,ミナミキイロアザミウマの卵は捕食しなかった。ミナミキイロアザミウマ2齢幼虫を与えた場合,ハナカメムシ1齢幼虫,3齢幼虫,5齢幼虫および雌成虫の25°C, 16L-8Dにおける24時間当りの捕食量はそれぞれ3, 11, 13および22匹であり,ミナミキイロアザミウマ成虫を与えた場合,ハナカメムシ雌成虫の捕食量は26匹であった。2) 同じ条件下で,ハナカメムシ雌成虫はカンザワハダニ雌成虫を21匹,ワタアブラムシ1齢幼虫を12匹,4齢幼虫を6匹捕食した。3) 孵化直後からカンザワハダニで飼育したハナカメムシ雌成虫にミナミキイロアザミウマ2齢幼虫とカンザワハダニ雌成虫とを同時に与えた場合はミナミキイロアザミウマが,カンザワハダニ雌成虫とワタアブラムシ4齢幼虫とを同時に与えた場合はカンザワハダニが先に捕食される確率が高かった。ワタアブラムシで飼育したハナカメムシ雌成虫にミナミキイロアザミウマ2齢幼虫,ワタアブラムシ4齢幼虫およびミナミキイロアザミウマ2齢幼虫,ワタアブラムシ1∼2齢幼虫を2種ずつ同時に与えた場合では,最初に捕食される確率はどちらもミナミキイロアザミウマが高かった。野外から採集したハナカメムシ雌成虫にミナミキイロアザミウマ2齢幼虫,カンザワハダニ雌成虫およびワタアブラムシ4齢幼虫を2種ずつ同時に与え餌選択を調べた結果,最初に捕食される確率はミナミキイロアザミウマが最も高く,次いでカンザワハダニとなり,ワタアブラムシが最も低かった。
著者
永井 一哉 平松 高明 逸見 尚
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.300-304, 1988-11-25
被引用文献数
12 26

ミナミキイロアザミウマの天敵としての<i>Orius sp.</i>の有効性を明らかにするため,ミナミキイロアザミウマが発生するポット栽培のナスに<i>Orius sp.</i>を放飼し生息密度に及ぼす影響を調査した。<br>1) ミナミキイロアザミウマのみ発生がみられるナスにMPP乳剤を散布した場合,ミナミキイロアザミウマの生息密度は'無散布区と比較してやや抑制された。しかし,<i>Orius sp.</i>とミナミキイロアザミウマを放飼したナスにMPP乳剤を散布し,<i>Orius sp.</i>の生息密度を低下させると,無散布区に比較してミナミキイロアザミウマの生息密度はきわめて高まった。<br>2) ミナミキイロアザミウマが葉当り約60匹発生する本葉7.5葉展開したナスの育苗ポットにケージを被せ,そのなかに<i>Orius sp.</i>の成虫1匹と老齢幼虫5匹を放飼すると,ミナミキイロアザミウマの生息密度は放飼6日後から低下し始め,13日後には無放飼の60分の1に当たる葉当り0.3匹まで減少した。<br>3) 以上の結果,<i>Orius sp.</i>は,ミナミキイロアザミウマの生息密度を低下させることができる有力な天敵のひとつであると判断された。