著者
永井 智香子
出版者
多文化関係学会
雑誌
多文化関係学 (ISSN:13495178)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.3-20, 2015 (Released:2017-01-23)
参考文献数
15

日本における華僑は二つに分けられる。1980年ごろからの中国の改革開放後、留学などの目的で日本に来た中国人は新華僑と呼ばれ、1970年代以前から日本に暮らす老華僑とは区別されている。現在、新華僑はその数においても老華僑を上回り、社会のさまざまな分野で活躍している者もいる。新華僑の中には幼い子供を伴って来日する者もいる。21世紀になり、入国時幼かった新華僑二世も日本で成人している。本稿は幼い頃親に連れられて中国から日本に来て、日本で成人した新華僑二世のアイデンティティをインタビューという質的調査法により探ろうとしたものである。新華僑の来日時期から見ても、二十代の若者に成長した新華僑二世に関する研究はこれからの研究分野であると言える。インタビューの結果、本研究のインフォーマントらは中国と日本が融合した複合的なアイデンティティを持つことがわかったが、その中身は中国語と日本語を自由にあやつり、中国と日本の二つの国の文化を見事なまでに客観視できるものであった。そして、自らのアイデンティティをポジティブにとらえ、それを強みと考え、日本社会で活かしたいと考えていることがわかった。
著者
永井 智香子
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大学留学生センター紀要 (ISSN:13486810)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.53-76, 1997-03-25

戦後50年以上たった今も中国から残留邦人が肉親探しのために来日している。そして,その多くは故国日本への永住帰国を希望している。家族を伴っての"帰国"となるが,その中に自分の意思ではなく,家族に伴って来日する学齢期の子供たちもいる。国際化という言葉が市民権を得て久しいが,中国から来た子供たちが学校で差別されたり,偏見の目に晒されたりするという報告が少なからずある。それらの差別や偏見は非行の引き金となることもあるという。そこで,インタビューという方法を用いて,中国から来た若者たちが受けてきた差別や偏見とそれにともなう心の動きや痛みを明らかにした。