著者
永塚 貴弘
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.94, no.12, pp.577-584, 2020-12-25 (Released:2021-12-31)

米ぬかにはトコトリエノール(T3)、フェルラ酸(FA)、γ-オリザノールなどの機能性成分が多く含まれる。不飽和ビタミンEであるT3の高い抗がん活性が注目を集めており、その効果はトコフェロールよりも強いことが知られている。がん細胞や腫瘍組織からテロメラーゼ活性が検出されることから、テロメラーゼはがん治療のターゲットとして期待されている。T3はプロテインキナーゼCの阻害を介してc-mycとテロメラーゼ触媒サブユニット(hTERT)の発現を抑制することでテロメラーゼ活性を阻害することを見出した。また、FAがT3のがん抑制効果(G1期停止を介した細胞増殖阻害とテロメラーゼ阻害)を相乗的に高めることを明らかにした。本研究により、T3によるがん抑制の新たな作用機序が解明され、T3の高い抗がん活性を裏付けた。
著者
永塚 貴弘 西田 浩志 仲川 清隆 宮澤 陽夫
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.261-268, 2017 (Released:2019-08-05)
参考文献数
34
被引用文献数
1

こめ油には不飽和ビタミンEトコトリエノール (T3),フェルラ酸(FA),γ-オリザノール, 植物ステロールなどの食品成分が豊富に含まれていることから,こめ油の健康機能性が注目を集めている。 我々はT3の抗血管新生やテロメラーゼ阻害を報告し,T3が高い抗がん作用を有することを明らかにしてきた。T3は4種の異性体の間で生理活性の強さが異なり,δ-T3が最も高い抗がん効果を示す。T3は通常のビタミンEであるトコフェロールと比較してバイオアベイラビリティが低いため,T3の生理活性を相乗的に高める化合物が精力的に探索されている。本総説では,こめ油成分であるT3とFAを活用した相乗的ながん抑制作用について紹介する。