著者
永渕 裕子 伊藤 彦 小泉 宏隆 風間 暁男 高木 正之 山田 秀裕 尾崎 承一
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.75-81, 2016-03-30 (Released:2016-05-31)
参考文献数
13

子宮腫瘍と両側副腎腫瘍を呈した悪性リンパ腫(ML)合併シェーグレン症候群(SjS)の2剖検例を経験した.症例1:関節リウマチとSjS合併の83歳女性.下腿浮腫精査で子宮腫瘍を指摘.症例2:SjSの83歳男性.発熱精査で両側副腎腫瘍を指摘.2例共生検できず.剖検でびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の診断が確定した.MLによる子宮と副腎病変は稀で,SjSでの報告はない.SjSに合併する腫瘍の鑑別として重要と考え,報告する.
著者
永渕 裕子
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

関節リウマチ(RA)の治療には炎症の制御と骨破壊の制御が重要である。Interleukin(IL)-34はColony-Stimulating Factor-1 Receptor (C)の第2のリガンドとして発見された慢性炎症と骨吸収に関与するサイトカインである。IL-34のRAの病態における役割を明らかにする目的で実験を行なった。RAおよび変形性関節症(OA)患者血清およびRA滑膜細胞を用いた。各種サイトカインをELISA法で測定した。CSF-1Rの発現は免疫組織染色で検討した。血清IL-34はOAに比べRAで有意に増加していた(RA;13.0±23.1,OA; 0.3±0.3 pg/ml, p<0.05)。RA初代滑膜細胞の培養上清で自発的にIL-34の産生を認めた。RA線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)はIL-1,TNFα刺激でIL-34を産生した。RAFLS はIL-34の受容体であるCSF-1Rを発現していた。RAFLSはIL-34刺激でIL-6を産生した。IL-1で刺激したRAFLS から産生されるIL-6は抗IL-34抗体, 抗CSF-1R抗体で抑制された。RA患者ではIL-34産生が亢進しており、滑膜病変でIL-34が産生れ、病態形成に関与していることを明らかにした。IL-34はRAの新たな治療標的となる可能性が示唆された。さらに本研究者はRA滑膜の病態形成にプロラクチが関与していることを報告している(JRheumatol. 1999, 26(9):1890-1900.)。滑膜細胞にIL-34を滑膜細胞にIL-34を添加すると培養上清中のプロラクチン産生の増加が認められた。これまでIL-34とプロラクチンの関連の報告はなく、今後さらに検討を重ねたい。肺がん患者の癌細胞がIL-34を産生し、IL-34をターゲットにした肺がん治療を提案する論文がある。IL-34をターゲットにしたRA治療を行うことで、担癌患者の腫瘍免疫を抑制にせずにRA治療ができる可能性があり 癌合併RA患者血清を用いた実験を追加し、この点も引き続き検討したい。