著者
永田 尚義
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.3180-3188, 2012 (Released:2012-10-22)
参考文献数
23
被引用文献数
1

感染性腸炎は日常臨床上頻度の高い疾患群である.細菌性腸炎を疑う場合には便培養検査により病原菌を同定するが,便培養の病原菌同定率は非常に低い.内視鏡検査は,特徴的な画像所見が得られるだけでなく,病変部からの腸液の吸引や生検を行えるため,感染性腸炎の診断に有用である.内視鏡検査により得られた腸液あるいは生検検体を,可能性の高い病原微生物を想定し,鏡検法,培養法,PCR法,免疫組織化学的検査などを用いて検討することにより,診断の精度が上昇する.これらを各検査部門に依頼する場合には,臨床情報を十分伝えることが肝要である.
著者
青木 智則 永田 尚義 藤城 光弘
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.335-343, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
25

大腸憩室出血には特異的な薬物治療が存在しないことから,再出血の多さが臨床上の課題である.内視鏡治療による止血効果や再出血抑制効果が重要視され,これまで様々な治療法が提唱されてきた.しかしながら,2020年頃までの報告は大多数が単施設研究であり症例数が少なかったため,十分なエビデンス構築に至っていなかった.近年,本邦の全国規模の急性血便症例データベース(CODE BLUE-J study)より,憩室出血研究の成果が複数報告された.①憩室出血を疑う患者の内視鏡検査時に積極的に出血所見を同定して治療することは,再出血を抑制するため意義があり,②内視鏡治療は左側結腸出血よりも特に右側結腸出血において推奨され,③バンド結紮法はクリップ法よりも治療効果が期待でき,特に右側結腸出血では出血状況に応じた治療法の選択(クリップ直達法か縫縮法かも含めて)が望ましい,ことが大規模データより示唆された.大腸憩室出血に対する内視鏡治療の適応や戦略の標準化に寄与すると考えられる.