著者
藤本 一眞 藤城 光弘 加藤 元嗣 樋口 和秀 岩切 龍一 坂本 長逸 内山 真一郎 柏木 厚典 小川 久雄 村上 和成 峯 徹哉 芳野 純治 木下 芳一 一瀬 雅夫 松井 敏幸
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.2075-2102, 2012 (Released:2012-07-26)
参考文献数
66
被引用文献数
7

日本消化器内視鏡学会は,日本循環器学会,日本神経学会,日本脳卒中学会,日本血栓止血学会,日本糖尿病学会と合同で“抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン”を作成した.従来の日本消化器内視鏡学会のガイドラインは,血栓症発症リスクを考慮せずに,抗血栓薬の休薬による消化器内視鏡後の出血予防を重視したものであった.今回は抗血栓薬を持続することによる消化管出血だけでなく,抗血栓薬の休薬による血栓塞栓症の誘発にも配慮してガイドラインを作成した.各ステートメントに関してはエビデンスレベルが低く推奨度が低いもの,エビデンスレベルと推奨度が食い違うものがあるのが現状である.
著者
青木 智則 永田 尚義 藤城 光弘
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.335-343, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
25

大腸憩室出血には特異的な薬物治療が存在しないことから,再出血の多さが臨床上の課題である.内視鏡治療による止血効果や再出血抑制効果が重要視され,これまで様々な治療法が提唱されてきた.しかしながら,2020年頃までの報告は大多数が単施設研究であり症例数が少なかったため,十分なエビデンス構築に至っていなかった.近年,本邦の全国規模の急性血便症例データベース(CODE BLUE-J study)より,憩室出血研究の成果が複数報告された.①憩室出血を疑う患者の内視鏡検査時に積極的に出血所見を同定して治療することは,再出血を抑制するため意義があり,②内視鏡治療は左側結腸出血よりも特に右側結腸出血において推奨され,③バンド結紮法はクリップ法よりも治療効果が期待でき,特に右側結腸出血では出血状況に応じた治療法の選択(クリップ直達法か縫縮法かも含めて)が望ましい,ことが大規模データより示唆された.大腸憩室出血に対する内視鏡治療の適応や戦略の標準化に寄与すると考えられる.
著者
小野 裕之 八尾 建史 藤城 光弘 小田 一郎 上堂 文也 二村 聡 矢作 直久 飯石 浩康 岡 政志 味岡 洋一 藤本 一眞
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.273-290, 2020 (Released:2020-02-20)
参考文献数
138
被引用文献数
2

早期胃癌に対する内視鏡治療が急速な拡がりを見せている現況において,日本消化器内視鏡学会は,日本胃癌学会の協力を得て,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として,“胃癌に対するESD/EMRガイドライン”を2014年に作成した.この分野においてはエビデンスレベルが低いものが多く,コンセンサスに基づき推奨度を決定しなければならないものが多かったが,近年,よくデザインされた臨床研究が増加している.新しい知見を踏まえて,適応・術前診断・手技・根治性の評価・偶発症・術後長期経過・病理の7つのカテゴリーに関して,改訂第2版を刊行し,現時点での指針とした.
著者
角嶋 直美 矢作 直久 藤城 光弘 井口 幹崇 岡 政志 小林 克也 橋本 拓平 小俣 政男
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.1266-1271, 2005-06-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
12
被引用文献数
1

【背景と目的】内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の登場により,従来では考えられなかった大型病変も内視鏡的に治療されるようになってきた.しかし,ESDによって生じた大型人工潰瘍の治癒過程についての詳細は明らでかはない.そこで,ESD後の治癒過程を明らかにするため,経時的な内視鏡像の検討を行った.【方法】当科においてESDによって治療された胃粘膜内腫瘍70症例を対象として,ESD後潰瘍の治癒過程および瘢痕形態を,切除サイズ,部位,胃壁の断面区分別に検討した.内視鏡観察は,原則としてESD後1,4,8,12週目に行い,抗潰瘍治療として,プロトンポンプ阻害薬(PPI)及びスクラルファート通常量を投与した.【結果】ESDの切除サイズは平均34.7mm(20.0~90.0mm)であった.ESD後潰瘍は切除サイズや部位・周在によらず,全例において8週までにS1-2stageに治癒・瘢痕化した.【結論】ESD後潰瘍は大型のものでも,消化性潰瘍と同様の治療で術後8週以内に治癒・瘢痕化する.これらは,ESD後のフォローアップや治療計画の立案に非常に有用な知見と考えられた.
著者
古川 和宏 中村 正直 藤城 光弘
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.117, no.6, pp.469-476, 2020-06-20 (Released:2020-06-20)
参考文献数
46

国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」の2019年がん統計予測によると,胃がんの罹患数は第2位,死亡者数は第3位を占めており,依然本邦におけるがん対策において,最重要がん腫の1つに位置付けられている.「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン2014年版」において,胃内視鏡検診の胃がん死亡率減少効果が認められ,対策型・任意型検診としての実施が推奨されるようになった.胃内視鏡検診の精度管理を行うためには,がん検診受診率,要精検率,がん発見率,陽性反応適中度といったプロセス指標や感度・特異度の算出が必要である.本稿では胃がんの内視鏡検診の現状と今後の展望について概説する.
著者
飯田 忠 大野 栄三郎 石川 卓哉 川嶋 啓揮 藤城 光弘
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

膵がんに代表される難治がんは免疫チェックポイント阻害剤(以下ICI)に対して抵抗性であり、その原因としてCAFが重要な役割を担っている。近年の研究によりCAFを促進性から抑制性にリプログラム(CAF初期化)させることで抵抗性が改善される可能性が示唆されているがその有効性に関しては明らかとなっていない。我々はMeflinを指標とすることでCAF初期化薬の候補薬を既に同定しており、本研究ではこれらの薬剤とICIとの併用効果を検証し、間質をターゲットとした革新的新規治療法の確立を目指す。
著者
坂口 賀基 山道 信毅 藤城 光弘
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.119, no.2, pp.103-111, 2022-02-10 (Released:2022-02-10)
参考文献数
72

非乳頭部十二指腸上皮性腫瘍は,主に家族性大腸ポリポーシス由来と特発性に大別される.Wnt pathwayが腺腫発生から発癌初期の中心的役割を担い,特発性でもAPC変異自体の頻度が低いもののWnt pathway異常活性化が80%に認められる.またWnt pathway異常活性亢進に加え,さらに別の発癌関連遺伝子の異常も発癌に必要とするmulti-hit theoryが有力視され,大腸癌adenoma carcinoma sequenceと類似する点が多い.一方で胃型粘液形質に特異的なGNAS変異も確認されている.また十二指腸癌独自の発生機序が存在する可能性もあり,さらなる研究が必要である.
著者
藤城 光弘 池田 祐一 熊谷 英敏 山下 裕玄 森田 啓行 浅岡 良成
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

Wntシグナル制御機構:R-spondin-LGR4/5/6-ZNRF3/RNF43系を標的とした 抗癌剤としてのR-spondin活性阻害剤、腸管粘膜再生促進剤としてのR-spondin代替え低分子化合物の同定を目指し、 低分子化合物ライブラリーをスクリーニングした。その結果、再現性を持ってR-spondin 阻害活性を有する化合物を60種類、R-spondin 様活性を有する化合物を1種類同定した。その後の解析により、R-spondin 様作用を有する化合物はZNRF3/RNF43を介して作用することが確認され、消化器疾患再生医療領域における有望な創薬シーズになりうることが示唆された。