著者
橋本 佳明 永田 泰自 四柳 宏 渡辺 毅 岡 博 黒川 清
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.45-50, 1995-01-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
14
被引用文献数
1

症例は29歳の男性微小変化型ネフローゼ症候群のために, プレドニゾロン治療を受けた. その経過中 (プレドニゾロン50mg投与中, 総投与量5300mg) に, 空腹時の低血糖 (40-50mg/dl) と高インスリン血症 (17~27μU/ml) がみられ, インスリノーマの合併が疑われた. 日内血糖・インスリン変化と75g経口ブドウ糖負荷試験で, 軽度の耐糖能異常と高インスリン血症が認められた. Cペプチド抑制試験では, Cペプチドが3.3から1.2ng/mlまで低下した. CT検査で膵のびまん性腫大が認められたが腫瘤は検知できなかった. プレドニゾロンの減量に伴い空腹時インスリンは低下し, 空腹時血糖もほぼ正常まで上昇した. その後8年間低血糖症状はみられず, また最近の空腹時血糖とインスリンも正常である. 以上の検査および経過より, この症例の空腹時高インスリン血症・低血糖の原因は, インスリノーマではなく投与されたプレドニゾロンであると強く疑われた.