著者
勝川 秀夫 硲 哲崇 中島 清人 江口 公人 中橋 章泰 小林 倫也 杉村 忠敬
出版者
朝日大学
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 (ISSN:03850072)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.277-289, 2004-11-20

ヒトをはじめ動物は食物中にしばしば含まれる毒物に対し,それを無害化する手段を進化の過程で獲得してきた.例えば,食物中のタンニンは動物に対しさまざまな有害作用をもたらすが,クマやヘラジカのようにタンニンを含む植物を常食とする動物は唾液の中にその毒性を低下させる高プロリン・タンパク(PRP)を持つようになった.また,ラットやマウスは本来このタンパクを持たないが,タンニンを含む飼料を数日間食べると唾液中にPRPが誘導され生存することができる.一方,このタンパクを誘導できないハムスターはやせ衰え死んでしまう.パパイン(システインプロテアーゼ)やカプサイシン(唐辛子の辛味成分)により誘導されるシスタチンも同じ範疇に属するペプチドと思われるが,PRPに比べ未だ情報量は少ない.本稿では,食物中の毒物・侵害物質の処理に関係すると思われる唾液タンパクについて解説する.
著者
江口 公人 杉元 敬弘 重村 宏 又口 公人
出版者
特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
雑誌
日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学 (ISSN:13468111)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.223-230, 2011

歯周病やその他の原因により歯が欠損し,最終的に無歯顎の状態になると通常なら総義歯による咬合の回復となる.しかし,歯牙を失い,支台歯支持型の咬合から粘膜支持型の咬合に移行した時点で口腔内は基準を失い,個人が永久歯列完成時に持っていた歯の形態やそれによって支持されていた下顎位は喪失されてしまう.総義歯作製法において下顎位を求める方法は種々提言されているが,固定して咬合採取する方法がないためにその手技が困難で術者の技量に左右されやすいのと,その人工歯形態においては顎堤の吸収度合などを参考にして決定しているのが現状ではないかと思われる.<br>しかし近年,無歯顎患者に対してインプラントを利用してのBone Anchored Bridge により,粘膜支持型の補綴から骨支持型の補綴を行うことが可能となって来ている.<br>本稿では固定式の補綴を与える場合の下顎位の決定法と歯牙形態の決定法について,現在われわれがおこなっている理論と手法を述べる.