著者
江口 愛実 小川 景子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第15回大会
巻号頁・発行日
pp.70, 2017 (Released:2017-10-16)

単調な低音呈示の中で稀な高音とともに呈示された視覚刺激は弁別性が向上することが知られており (Vroomen & Gelder, 2000),このような弁別性の向上は視聴覚統合の発生を反映する。本研究では記憶課題と事象関連電位 (P3成分) を用いて,視聴覚統合が視覚刺激の記憶処理過程に及ぼす効果について検討した。参加者は,瞬時に切り替わる幾何学図形の記銘と,その後に再認が求められた。記銘時における図形の呈示は低音の聴覚刺激と同時に行われたが,稀に高音の聴覚刺激が呈示された。検討の結果,稀な高音とともに呈示された図形で記銘時のP3振幅が有意に増大し,再認率も向上した。これらの結果は,稀な聴覚刺激とともに呈示された視覚刺激に対して視聴覚統合が生じ,刺激の弁別性が向上したことで,記銘処理が促進されたことを示す。