著者
中尾 啓太 小川 景子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第14回大会
巻号頁・発行日
pp.10, 2016 (Released:2016-10-17)

それまで経験したことがないにも関わらず,以前どこかで経験したことがあると感じた際の,鮮明な感覚の体験をデジャヴ (deja vu) という(Brown, 2004)。デジャヴ発生には新規刺激の形態 (Brown & Marsh, 2010) や,情報量 (Cleary et al., 2012) が影響することが報告されている。これまで情報量の操作には静止画 (二次元と三次元) が用いられていることから,本研究では,研究1として動画を用いて情報量の操作を行い,さらに研究2として情報の質 (文脈) に着目してデジャヴの発生要因に関する検討を行った。 検討の結果,先行する記憶に情報量が少なく (研究1),先行記憶と目の前の刺激に共通する文脈情報がある (研究2) ことによりデジャヴ感覚の発生が促進されることが示された。
著者
黒原 玄弥 小川 景子
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
pp.2012oa, (Released:2020-12-10)
参考文献数
40

画像の色は,感情画像によって喚起される感情の処理を促進させる。感情処理過程に関連する事象関連電位について,初期後頭陰性電位 (early posterior negativity: EPN) はモノクロ画像よりもカラー画像で振幅が増大するのに対し,後期陽性電位 (late positive potential: LPP) に対する色の影響は一貫していない。色は画像の大域的な認識も容易にする。そこで本研究では,画像内容の識別が困難な不鮮明画像(低周波通過処理画像)を用いることで,画像の色が感情に関連する主観および生理指標(EPNとLPP)に影響を及ぼすか検討した。参加者に対して,快/中性/不快画像の感情価を判断する課題を実施し,課題中の脳波を測定した。検討の結果,快/中性画像では,カラー画像の方がモノクロ画像と比べ主観的に快と評定された。画像の鮮明性に関わらず,EPN振幅はモノクロ画像よりもカラー画像で増大したのに対して,LPP振幅に色の影響は観察されなかった。本研究結果から,画像の色は,画像の鮮明性に関係なく,感情画像の初期の知覚を促進し,感情画像の主観評定にも影響を及ぼすことが明らかになった。
著者
瀬戸 奏音 小川 景子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第15回大会
巻号頁・発行日
pp.95, 2017 (Released:2017-10-16)

夢とは全ての人において睡眠中毎晩生成されている現象である.しかし,夢内容の生成起序や規定要因について,未だ一定の知見は得られていない.不快な夢内容に関する先行研究では,精神疾患との強い関連が報告されている一方で,健常者を対象とした研究は少ない.さらに,夢内容の生成に関する主観的な要因について,個人特性に着目した研究が多い一方で,日中および就床前の気分の影響を検討した研究は少ない.本研究では,健常大学生を対象に,自宅での夢聴取により個人特性と就床前の気分が夢内容に影響する様子を検討した. マルチレベル相関分析により有意な相関が認められた項目について,マルチレベル構造方程式モデリングを用いた媒介分析を行った.その結果,STAIの特性不安,状態不安と夢のネガティブ情動因子得点に関して,特性不安は夢のネガティブ情動因子に対して,状態不安を媒介することで不快な夢内容へ影響することが示された.
著者
塚田 学 菰原 裕 粕谷 貴司 新居 英明 高坂 茂樹 小川 景子 江崎 浩
雑誌
情報処理学会論文誌デジタルコンテンツ(DCON) (ISSN:21878897)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.10-23, 2018-08-20

インターネットを前提とした視聴サービスが登場し,なかでも空間に存在する視聴対象を解釈し,コンテンツとして活用するオブジェクトベースの視聴サービスの重要性が増している.2014年より,Software Defined Media(SDM)コンソーシアムでは,オブジェクトベースのメディアとインターネットを前提とした視聴空間の研究を行っている.現在,音楽イベントのDVDなどのパッケージメディアは,マイクやカメラなどの収録機材の位置によって大きく制約を受けるコンテンツである.こうした課題を解決するため,本研究では,クラシックコンサートとジャズセッションのイベントを収録し,インタラクティブに自由視聴点での三次元映像音声を再生するアプリケーション「SDM3602」を設計,実装した.SDM3602を95人の被験者に実際に体験してもらい,インタラクティブ3Dコンテンツの自由視聴点再生の有効性を検証した.さらにビルボードジャパンが開催した2017年Live Music HackasongでSDM3602のデモンストレーションを行い,審査員と一般の来場者の投票により,優秀賞を受賞した.Various audio-visual service based on Internet are deployed these days widely. Among these, object-based audio-visual services are getting more critical. We started Software Defined Media (SDM) consortium to investigate object-based audio-visual services and Internet-based audio-visual since 2014. The placement of microphone and camera limits the audience to watch at the free viewpoint of the contents of the package media such as DVD. In the study, we designed and implemented the system of interactive 3D audio-visual service with a free-view-listen point, named SDM3602. 95 persons experienced SDM3602 and answered the questionnaire in subjective evaluation. We also demonstrated the system in "Live Music Hackasong 2017" hosted by Billboard Japan. We received the second prize based on the vote of the judges and the audience.
著者
江口 愛実 小川 景子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第15回大会
巻号頁・発行日
pp.70, 2017 (Released:2017-10-16)

単調な低音呈示の中で稀な高音とともに呈示された視覚刺激は弁別性が向上することが知られており (Vroomen & Gelder, 2000),このような弁別性の向上は視聴覚統合の発生を反映する。本研究では記憶課題と事象関連電位 (P3成分) を用いて,視聴覚統合が視覚刺激の記憶処理過程に及ぼす効果について検討した。参加者は,瞬時に切り替わる幾何学図形の記銘と,その後に再認が求められた。記銘時における図形の呈示は低音の聴覚刺激と同時に行われたが,稀に高音の聴覚刺激が呈示された。検討の結果,稀な高音とともに呈示された図形で記銘時のP3振幅が有意に増大し,再認率も向上した。これらの結果は,稀な聴覚刺激とともに呈示された視覚刺激に対して視聴覚統合が生じ,刺激の弁別性が向上したことで,記銘処理が促進されたことを示す。
著者
小川 景子
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究はレム睡眠中の急速眼球運動に伴う脳活動と夢内容との対応関係を検討した。その結果、急速眼球運動の数が多いほど夢が印象的になり、運動野の賦活を反映する脳活動は、夢の活動性・奇異性と関連することが示された。さらに、急速眼球運動数は日中の新規運動学習課題の成績と正の相関関係を示した。この結果より、レム睡眠中の急速眼球運動はレム睡眠中の脳活動をより活性化することで、夢の内容をよりありありと鮮明にし、日中の新規学習課題の成績向上にも関与する可能性が示唆された。