著者
ニャダワ モーリス 小葉竹 重機 江崎 一博
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.84-92, 1995

ケニアのAthi川は赤道直下の流域であるが,標高1500m~2000mの水源地帯から河口のインド洋まで,気候的には大きくは3つに分けられる流域である.首都ナイロビが位置する上流部の年降水量は1000mm前後で2回の雨期があり,沿岸部も1000mm前後ではあるが雨期は年1回である.その中間には年降水量500mm前後の半乾燥地帯が広がっており,雨期は上流と同じく2回ある.各地域の日雨量と日流量の年最大値に対して極値分布をあてはめて,その特徴を比較した.その結果,上流湿潤地域と中流半乾燥地域の年降水量は大きく異なるが,日最大雨量の確率分布はほぼ同じであり,大きな雨についてはほぼ同じ降り方をしていることが分かった.沿岸湿潤地域は上流湿潤地域と年降水量はほぼ同じであるが,日最大雨量は,沿岸部の方が大きな値となる.流量については3気候区についてそれぞれ異なった分布となるが,多くの流量観測点のある上流域については流域面積と年平均流量の間に一定の関係が認められ,少なくとも上流域は洪水流量については等質の流域とみなすことができる.
著者
ニャダワ モーリス 小葉竹 重機 江崎 一博
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF HYDROLOGY AND WATER RESOURCES
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.93-100, 1995

ケニアは大きく5個の流域に分けられ,その第3番目の流域はAthi川流域で流域面積約7万km2で,そのうち65%がAthi川本川である。残り35%は直接インド洋に注ぐそれぞれ独立したいくつかの河川から構成される。Athi川本川の上流域は3月~5月と10月~11月にかけての2回の雨期をもつが,とくに3月~5月の雨期では雨のピークは4月にあるにもかかわらず,流量のピークは5月になってから現れる。この現象は流域面積が数十km2の小流域でも顕著に認められ,水文学的に大きな流域とみなすことができる。このような性質をもつ流域からの流出をタンクモデルによってシミュレートした。タンクは3段直列であるが,1段目のタンクの浸透孔を底部より高い位置に開口し,土壌に取り込まれ蒸発散のみで失われる土壌水分成分を表現した。蒸発散量は蒸発皿の値に一定の係数をかけた値を用いた。1960年~1988年の資料を用いてシミュレーションを行った結果,良好な結果が得られた。