著者
江沢 太一
出版者
学習院大学
雑誌
学習院大学経済論集 (ISSN:00163953)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-9, 1970-06

ヘクシャー・オーリンの定理を典型的一例とする国際貿易の静学理論においては,各国の資源賦存量一例えば資本ストックおよび労働一が一定と前提されているが,時間とともに資本蓄積および労働力人口の増加が進行するにつれて,貿易のパターンはどう変るであろうか。またこの場合,経済体系全体の推移はどうなるであろうか。例えば資本蓄積もしくは経済成長の経路は,どのような条件の下で安定的といえるであろうか。このような動学過程の分析はこれまで数多く行なわれてきたが,特に鬼木・宇沢によるもの〔5〕がこの方面での一つの重要な貢献であると思われる。ケンプの近著〔4〕,第10章においてもほぼ全面的にその結果が継承されている。 本稿の目的は,筆者が先に行なった二部門成長モデルにかんする分析〔1〕を基に,上記の鬼木・宇沢モデルに従って開放体系における経済成長経路の安定性の問題を考察することにある。特に分析の前提条件を可能な限り一般化して扱うことにする。