著者
西村 敏英 江草 愛
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.167-176, 2012
参考文献数
17
被引用文献数
2

「こく」は、昔からラーメン、カレー、シチュー、味噌などの食べ物に使われており、おいしい食べ物を表現する言葉としてよく使われている。最近では、キムチ、ヨーグルト、紅茶、ビール、調味料などの商品名にも「こく」という言葉が使われるようになってきた。しかし、「こく」に対する明確な定義はされていない。本稿では、「こく」の定義を提案すると同時に、「こく」付与物質の特性から、「こく」付与物質を分類することを試みた。また、最近、我々は、タマネギ由来の物質に「こく」を付与する効果を見出したので、この物質の特性並びにその「こく」付与効果を紹介する。
著者
西村 敏英 江草 愛
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.102-108, 2016-01-20 (Released:2017-01-20)
参考文献数
22
被引用文献数
6

「こく」は,現在,おいしさと同義語で使用されている場合が多い.しかし,「こく」は,味,香り,食感,色,艶と同様に,それぞれの食べ物が有する特性の一つであり,おいしさを決める要因である.「こく」には強弱が存在し,それぞれの食べ物に適した「こく」の強さでおいしさが付与される.「こく」は,食べ物の持つ味,香り,食感による複数の刺激から形成される複雑さによる特性である.これらの複数の刺激は,その食べ物の特徴を決める味わいのベースとなる部分であり,さらに持続性や広がりが付与されたときに「こく」が感じられる.このベース部分からできる味わいに持続性や広がりを与えることができる重要な成分として,現在,うま味物質と油脂が挙げられる.このうち,うま味物質は,味や香りからなる風味質を強くすると同時に広がりや持続性を与える.また,油脂は香気成分を保持することで,「こく」の特性である持続性を与えることができることがわかってきた.