著者
佛坂 正幸 上通 一師 久保 紳一郎 濱中 秀昭 自見 政一郎 日高 秀樹 江藤 忠明 千々岩 一男
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.173-177, 2007 (Released:2008-10-31)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

症例は21歳, 男性. ビルの3階より転落し, 踵より着地後にしりもちをついて転倒した. 仙骨レントゲンでは第2および第3仙骨が骨折し, 第3仙骨以下は前方に転位していた. また右仙骨孔に沿って縦骨折がみられた. 入院時には肛門周囲の皮膚感覚低下, 便の貯留感覚低下, 便・ガス失禁があった. 受傷後6, 14日目の直腸肛門内圧検査では, 随意収縮圧は認めなかった. 受傷後32日目にS2-4の全周性神経除圧術を施行, 受傷後49日目には随意収縮圧は4.9mmHgと若干の改善がみられた. 受傷後83日目には随意収縮圧は28.6mmHgと上昇, 固形便の失禁はなくなった. 受傷後200日目には随意収縮圧は53.8mmHgと改善し, ガス失禁もみられなくなった. 直腸肛門内圧測定で症状の改善に先行して肛門管随意収縮圧の改善をとらえることができ, 以後, 症状の改善を客観的に評価することができた.
著者
田中 俊一 島山 俊夫 増田 好成 麻田 貴志 岩砂 里美 江藤 忠明 千々岩 一男
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.1585-1589, 2008 (Released:2009-01-06)
参考文献数
20
被引用文献数
4 3

はじめに:当科で経験した腹部外科手術症例について,年齢別,緊急・待期手術別,併存疾患別に術後合併症発生率と術後30日以内死亡率を検討し,90歳以上の高齢者の手術における問題点を検討した.対象:2003年4月から2006年3月までの3年間に腹部手術を行った1,534例を対象とし,うち80歳代が240例,90歳以上の超高齢者は52例であった.結果:90歳以上の超高齢者群では,90歳未満群と比べて女性が多く,併存疾患を有する率も高率で,術後合併症発生率は44%と90歳未満の20%と比べ有意に高値であった.90歳以上の超高齢者群における術後死亡率は9.6%と,79歳以下と80~89歳の2群の死亡率と比較して高値を示し,待期・緊急手術両方とも90歳以上の超高齢者群で有意に高率であった.特に,術前併存疾患がある場合と術後合併症発生例において,超高齢者群で術後死亡率が有意に高かった.多変量解析で超高齢者の術後死亡に影響する有意な要因は,術後呼吸器合併症であった.考察:90歳以上の超高齢者の手術で,術前併存疾患を伴う症例や術後合併症を伴う症例では術後死亡率が高く,慎重な手術適応と術後管理を要するものと考えられた.