著者
池内 和彦 福島 一彰 田中 勝 矢嶋 敬史郎 関谷 紀貴 関谷 綾子 柳澤 如樹 味澤 篤 今村 顕史
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.358-364, 2018-05-20 (Released:2019-11-01)
参考文献数
18
被引用文献数
1

近年,本邦における梅毒患者が急増している.諸外国において梅毒に対する標準治療薬であるベンザチンペニシリンG の筋肉注射は,本邦では使用できない.日本性感染症学会から発行されている「性感染症診断・治療ガイドライン2016」では,梅毒に対する標準的治療としてアモキシシリン(AMPC)単剤の内服治療が推奨されているが,根拠となるエビデンスは十分とは言えない.今回我々は,経口AMPC 1,500mg/日単剤による治療を行った63 名の梅毒患者(HIV 患者47 例,年齢中央値40 歳)を対象に,その治療効果を後方視的に検討した.治療効果判定についてはRapid plasma reagin 自動化法の値が,診断時から1 年以内に1/4 以下へ低下した場合を治療成功と定義した.治療成功率は,全患者の95.2%(95% Confidence interval(CI),86.7~99.0%),HIV 患者の95.7%(95% CI,85.5~99.5%),非HIV 患者の93.8%(95% CI,69.8~99.8%)であった.梅毒の病期毎の治療成功率は,早期梅毒の97.8%(95% CI,88.5~99.9%),後期梅毒の88.2% (95% CI,63.6~98.5%)であった.今回の検討では,HIV 感染症の有無や,梅毒の病期に関わらず,経口AMPC 1,500mg/日単剤治療は,梅毒に対して高い治療成功率を認めていた.