著者
土井 信幸 小見 暁子 池永 啓介 大塚 穂乃香 秋山 滋男
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.77-90, 2021 (Released:2021-12-03)
参考文献数
23

一般用医薬品において酸化マグネシウムは瀉下薬の主成分、さらに、解熱鎮痛薬の吸収促進剤に含まれている。酸化マグネシウム製剤は高マグネシウム血症による健康被害や死亡例が報告されており、それに伴う医薬品安全性情報が発出されている。本研究は、酸化マグネシウムを含有した一般用医薬品による高マグネシウム血症発症後の重篤な副作用の回避を目的とし、薬剤師や登録販売者が販売する際の、考慮すべき患者背景と適正使用に関する情報提供内容のエビデンスの構築について検討した。 添付文書の調査の結果、瀉下薬かつ第3類医薬品の酸化マグネシウムの1日最大用量は医療用医薬品とほぼ同じ約2,000 mgであった。また、すべての商品で添付資料(患者説明書)に腎機能に応じた投与量の規定は定められていなかった。JADERの解析結果から、60代以上では高マグネシウム血症発症後の転帰死亡の割合は約2倍高かった。また、メタアナリシスからは、腎機能低下(CKDステージG3b以上)の患者では酸化マグネシウムの服用による高マグネシウム血症発症リスクが高いことが示された(RR[95% CI]: 3.14 [1.56-7.45])。 以上の結果より、薬剤師や登録販売者が酸化マグネシウム含有の一般用医薬品の販売時に、医療用医薬品の服薬有無や年齢や腎機能などの患者背景を確認すること、さらに、購入者に対して高マグネシウム血症の初期症状とその対応についての情報提供をすることが重要であると考える。