- 著者
-
池永 昌容
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2007
研究では,研究計画として3項目を設しそれぞれを並行して施している.3つの枠組みとは「セルフセンタリング柱脚(以下SC柱脚)の特性評価と設計法」,「新たなSC柱脚の開発」,「許容残留変形の定量化」であり,20年度は,19年度の研究経過を受けて前2項目に関して研究を実施した.研究状況は以下の通りである.1.SC柱脚の開発申請者が過去に実施したSC柱脚の開発,そして前年度に実施したSC柱脚の特性評価と設計法における研究成果をもとに,既存のSC柱脚の保有性能の増強と,多軸方向載荷への対応が可能となるように改良を加えたSC柱脚を開発した.そして2/3スケールの試験体を作成し,2軸同時載荷が可能な静的載荷装置を用いてその性能を確認した.その結果,保有性能の増強には成功し,また誤差20%未満で評価が可能な評価法を提案することができた.しかしながら,多軸方向載荷に対しては想定とは異なる挙動が見られるとともに改良点も明らかになり,今後の課題となった.2.SC柱脚の特性評価と設計法前年度の研究で明らかにした鋼とモルタル面の摩擦特性を利用した,「置くだけの柱脚」を利用した鋼構造骨組の特性を時刻歴応答解析で評価した.2層と3層の鋼構造骨組の側柱をSC柱脚,軸力変動がない中柱を「置くだけの柱脚」として,最大層間変形と残留層間変形を評価した.比較対象として,SC柱脚をすべての柱脚に用いた場合の,鋼構造骨組を考える.検討の結果,3層骨組では柱脚を併用することで,併用しない場合と比べて両応答ともに増大した.一方で2層骨組では,柱脚を併用しても,SC柱脚のみを使用した場合と同程度,もしくは最大層間変形は同程度であり残留層間変形は若干減少する傾向が見られた.この結果は,2層程度の鋼構造骨組では柱を基礎上に置くだけでも耐震上問題がないことを不しており,従来の柱脚工法と比べて施工性が格段にあがる新工法の可能性を示唆している.