著者
池田 由子/矢花 芙美子 矢花 芙美子
出版者
東洋大学
雑誌
東洋大学発達臨床研究紀要 (ISSN:13463624)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.46-59, 2002-03

神話の時代から伊邪那岐命と伊邪那美命が不具の水蛭子(ひるこ)を葦の舟に乗せ海に流したという伝説があるわが國では,長い間子どもは親にとって経済的な「もの」「経済的単位」に過ぎず,売ったり買ったり質(シチ)に入れることは自由であった。子どもを売った記録は天武天皇時代(676年)にさかのぼる。江戸時代の八代将軍吉宗のときから人口調査が始まったが,人口は明治時代に至るまで殆ど一定数を保っている。これは「間引き」という新生児殺や堕胎,棄子などが広く行われていたからである。江戸町奉行所の与力であった原胤(タネ)昭はのちに基督教の教誨師となり,免囚事業に勵んでいたが明治42年(1909)から被虐待児の救済に関係し,昭和9年(1933)の児童虐待防止法の成立,施行に至るまで,児童虐待防止に盡くした。江戸,明治,大正,昭和と90年近くを児童虐待のほか社会福祉,犯罪者の更生保護,女子教育等に献身したこの偉大な先駆者の生涯について報告したい。

1 0 0 0 OA 児童虐待

著者
池田 由子
出版者
日本精神衛生学会
雑誌
こころの健康 (ISSN:09126945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.4-9, 2001-06-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
10

児童虐待防止法が2000年5月に国会を通過し, 同年11月に施行されてから, 児童虐待の報告数は激増したが, 同時に児童相談所等の関係機関が接触しているにもかかわらず, 被害児が殺され, あるいは重篤な障害を残す事例が報告されるようになった。わが国の児童虐待の現状と問題点をさぐるため, 電話相談, 保健所, 児童相談所, 大学病院の現場で虐待を取り扱っている専門家にその現状, 問題点の報告を求めた。 また, 全体として今後の問題として虐待の定義, 範囲をはっきりすること, 法医学の関与の必要なこと, カルト宗教における児童虐待に注意を払うことなどにつき述べた。