著者
吉村 充功 池畑 義人 山下 彰彦 田村 真輝 三浦 正昭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
建設マネジメント研究論文集
巻号頁・発行日
vol.13, pp.247-254, 2006

建設産業では, 若年者の就職離れなどにより, 他の産業に比べ高齢層の割合が高くなっている. このような状況は地方ほど厳しくなっており, 近い将来に迎える大量定年退職時代に向けて, 建設企業がどのような問題を抱え, またそれに対応できる人材がどのようなものかを明らかにする必要がある. その上で, 高等教育機関である大学土木教育の効果的な改革の方向性を検討する必要がある.<BR>本研究では, 以上の問題意識に立ち, 地方の建設産業を支える中小建設企業に対して, 経営上の課題および必要な人材についての意識調査を実施した. これらを分析した結果, 企業が抱える課題としては, 「原価管理の徹底」, 「若手の育成」, 「受注量の増加」が上位となり, 企業の利益確保策のほか, 若年者育成が問題となっていることが明らかとなった. また, 大卒者に求める能力・資格としては「やる気」, 「責任感」といった基礎的な人間力のほか, 「パソコンの使用技術」や「コスト感覚」といった項目が上位となった. 一方で, 実際に採用を希望する企業が大卒者に求める能力・資格について, 数量化理論II類を用いて分析した結果, 「時事ネタの知識」, 「技術者倫理」といった情報力や倫理観の項目が強く反応し, 今後の人材育成の方向性についての知見を蓄積することができた.