著者
坂口 茂 福泉 麗佳 磯部 健志 川上 竜樹 船野 敬 池畠 優
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

研究目的は偏微分方程式で記述される問題の解の幾何学的性質の探求を主眼に, 偏微分方程式を介在として幾何学と逆問題を有機的に結びつけより一層発展させることにある。代表者坂口の主な成果の一つは2相熱伝導体上の熱流が定温度の界面を持つのは界面が超平面に限ることを示し複合媒質と単一媒質の決定的な違いを熱拡散方程式の視点から明らかにしたものであり, もう一つは位相的トーラス上の反応拡散方程式における幾らでも多くの個数の臨界点をもつ安定解の新しい単純な構成法の提示である。磯部は平坦トーラスへの漸近的に2次の摂動項を持つディラック・調和写像の個数の下からの評価とコンパクト性定理の証明及びディラック・測地線に対するモース・フレアー型のホモロジーを摂動項がスピノルに関して3次以上の増大度を持つ場合に構成した。川上は単位球の外部領域における動的境界条件を有する拡散方程式の拡散極限, 時空間に依存す非斉次項を有する非線形拡散方程式の大域可解性に関する臨界指数の導出, 及びCartan-Hafamard多様体上のSobolev不等式の考察を行った。船野は閉リーマン多様体及び境界付きコンパクトリーマン多様体上のp-ラプラシアンの固有値及び等周定数の上からの評価を与え, その応用として境界付きの場合にp-ラプラシアンの固有値による内接球の半径の上からの評価を得た。池畠は熱弾性体の方程式系で記述される物体内の空洞の幾何学的情報を物体表面上の有限時間にわたる一組のデータから抽出する問題を囲い込み法を用いて考察し, 未知の空洞を含む任意に与えられた点を中心とした最小の球を求める公式を確立した。福泉はデイラックのデルタ測度による強い特異性を伴う非線形項をもつ非線形シュレディンガー方程式において, 非線形デルタ相互作用がグラフの節点で発生している量子グラフに起因する量子ウォークの漸近挙動を調べた。