著者
文室 政彦 上田 和幸 沖嶋 秀史
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.364-372, 1999-03-15
被引用文献数
4 6

1995年に, 被覆条件下の根域制限ベッド(培地量160 liter/樹)に植栽した5年生ニホンナシ'幸水'と'豊水'を供試し, 乾物生産および分配の季節的変化を検討した.11月初旬の1樹当たり全樹体新鮮重は, '幸水'が約18 kg(82t/ha), '豊水'が約21 kg(96 t/ha)であった.収量は'豊水'が'幸水'より多かった.2品種とも生育が進むにつれて, 器官別乾物増加量が有意に増加し, 1年間の1樹当たり乾物生産量は, '幸水'が約3.37 kg(15 t/ha), '豊水'が約3.75 kg(17 t/ha)であった.単位葉乾物重当たりおよび単位葉面積当たり乾物生産量は, 生育が進むにつれて有意に増加した.1年間の単位葉乾物重当たり乾物生産量は, '幸水'が約6.33 kg・kg^<-1>, '豊水'が約6.59 kg・kg^<-1>, 1年間の単位葉面積当たり乾物生産量は, '幸水'が0.54 kg・m^<-2>, '豊水'が0.53 kg・m^<-2>で, いずれも品種間差異はなかった.2品種とも生育初期には, 新梢, 葉および細根への分配率が高く, 果実肥大期には果実への分配率が高かった.収穫後は旧枝への分配率が増加した.1年間の乾物分配率については, 品種間差異はなく, 果実に31%前後, 新梢に18%前後, 旧枝に16%程度, 葉に15%程度, 台木部に19%前後であった.2品種とも1日間の単位葉乾物重当たり乾物生産量は生育初期から9月初旬まで高く, その後は徐々に低下した.1日間の単位葉面積当たり乾物生産量も7月初旬から8月初旬まで最も高く, その後は徐々に低下した.'幸水'では1年間の乾物生産量が7月初旬までに42%, 9月初旬までに79%, '豊水'ではそれぞれ44%, 85%が生産された.