著者
文室 政彦
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.451-459, 2011 (Released:2011-11-19)
参考文献数
30
被引用文献数
2 3

マンゴー‘アーウィン’と‘愛紅’の自根苗を生産する目的で,取り木発根に及ぼす諸要因を調査するとともに,‘アーウィン’と‘愛紅’を含む17品種を供試して,取り木発根能の品種間差異を検討した.環状はく皮部の噴霧処理に使用するオーキシンの種類として,2品種ともNAAはIBAより発根率が高い傾向がみられたが,発根数および総発根長には有意差がなかった.一方,オーキシン処理を行わないと全く発根しなかった.NAA濃度としては,2品種とも発根率および総発根長が1,000 ppmより2,000 ppmで優れていたことから,発根に好適なNAA濃度は2,000 ppmと考えられた.NAAの追処理を行うと発根率が低下する傾向がみられ,‘アーウィン’では発根数および総発根長が低下した.ABAの添加は‘アーウィン’の発根に,形成層除去および発根培地の水分含有率は,‘愛紅’の発根に影響しなかった.2品種とも枝齢は発根に影響しなかったが,多着葉新梢は少着葉新梢よりも発根率が高い傾向がみられ,発根数および総発根長が高かった.2品種とも取り木適期は7~8月であると考えられた.取り木発根能の品種間差異では,‘スピリットオブ76’が最も高く,次いで,‘愛紅’,‘アーウィン’,‘コム’および‘グレン’であり,‘センセーション’,‘ゴールデンリペンス’および‘ドット’はやや低く,‘リペンス’,‘トミーアトキンス’,‘フロリジェン’および‘バレンシャプライド’は低く,‘アルフォンソ’,‘エドワード’,‘フロリゴン’,‘キョサワイ’および‘ナムドクマイ’は全く発根しなかった.
著者
文室 政彦
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3-4, pp.459-465, 1997 (Released:2008-05-15)
参考文献数
29
被引用文献数
5 4

西村早生わい性系統の果実生産力が高い原因を明らかにするために, 29年生および30年生樹を供試し,乾物生産と分配を検討した.1.強勢系統の地上部新鮮重および地下部新鮮重は, それぞれわい性系統より, 5.9倍, 5.3倍高かった. 材葉比およびT-R率は系統間に差がなかった.2.単位樹冠占有面積当たり収量は系統間に差がなかったが, 単位葉面積当たりおよび単位幹断面積当たり収量はわい性系統が強勢系統より高かった.3.着果樹の1樹当たり年間の乾物生産量は, 強勢系統がわい性系統より4.7倍高かった. 単位葉乾物重当たりおよび単位葉面積当たりの乾物生産量は系統間に差異はなかった. わい性系統は強勢系統より果実への乾物分配率が高く, 新梢および旧枝への分配率は低かった.4.適正着果樹は全摘果樹より, 1樹当たり年間の乾物生産量が強勢系統で1.3倍, わい性系統で2.2倍高く, 単位葉乾物重当たりおよび単位葉面積当たり乾物生産量は強勢系統で1.3倍, わい性系統で1.5倍高かった.以上の結果, '西村早生'わい性系統の果実生産力が強勢系統より高いのは, 葉の乾物生産力が高いのではなく, 果実への乾物分配率が高いためであることが明らかになった. また, わい性系統は葉量が顕著に少ないために樹体の全乾物生産量が低く, 加えて果実への乾物分配率が高いために新梢および旧枝への乾物分配率が低下し, 樹体をわい化させるものと考えられる.
著者
文室 政彦 宇都宮 直樹
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.1146-1148, 1999-11-15
被引用文献数
4 4

加温ハウス内において根域制限ベッドに植栽した7年生カキ'刀根早生'を供試し, 地中加温が新梢生長と果実発育に及ぼす影響を検討した.1月12日から4月15日まで, 地中に埋設したパイプに温湯を循環させて地温を20℃に維持する区と無処理区を設けた.地中加温は発芽および開花期にはわずかな影響しか及ぼさなかったが, 新梢生長および果実の成熟を促進し, 可溶性固形物含量を増加させた.しかし, 果実の結実率と肥大生長は地中加温によって低下し, 減収した.
著者
文室 政彦 上田 和幸 沖嶋 秀史
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.364-372, 1999-03-15
被引用文献数
4 6

1995年に, 被覆条件下の根域制限ベッド(培地量160 liter/樹)に植栽した5年生ニホンナシ'幸水'と'豊水'を供試し, 乾物生産および分配の季節的変化を検討した.11月初旬の1樹当たり全樹体新鮮重は, '幸水'が約18 kg(82t/ha), '豊水'が約21 kg(96 t/ha)であった.収量は'豊水'が'幸水'より多かった.2品種とも生育が進むにつれて, 器官別乾物増加量が有意に増加し, 1年間の1樹当たり乾物生産量は, '幸水'が約3.37 kg(15 t/ha), '豊水'が約3.75 kg(17 t/ha)であった.単位葉乾物重当たりおよび単位葉面積当たり乾物生産量は, 生育が進むにつれて有意に増加した.1年間の単位葉乾物重当たり乾物生産量は, '幸水'が約6.33 kg・kg^<-1>, '豊水'が約6.59 kg・kg^<-1>, 1年間の単位葉面積当たり乾物生産量は, '幸水'が0.54 kg・m^<-2>, '豊水'が0.53 kg・m^<-2>で, いずれも品種間差異はなかった.2品種とも生育初期には, 新梢, 葉および細根への分配率が高く, 果実肥大期には果実への分配率が高かった.収穫後は旧枝への分配率が増加した.1年間の乾物分配率については, 品種間差異はなく, 果実に31%前後, 新梢に18%前後, 旧枝に16%程度, 葉に15%程度, 台木部に19%前後であった.2品種とも1日間の単位葉乾物重当たり乾物生産量は生育初期から9月初旬まで高く, その後は徐々に低下した.1日間の単位葉面積当たり乾物生産量も7月初旬から8月初旬まで最も高く, その後は徐々に低下した.'幸水'では1年間の乾物生産量が7月初旬までに42%, 9月初旬までに79%, '豊水'ではそれぞれ44%, 85%が生産された.