著者
堀田 香織 沢崎 俊之
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1 学童期の子どもを養育する母子家庭の家族システム学童期の男児を養育するシングルマザーに5回の継続的な半構造化面接を実施し、さらに母子家庭の参与的観察も合わせて行った。その結果、離婚によって母親が疲弊し、離婚後母親としての養育機能を低下させ、この時期、学童期の男児が問題行動を表に表しやすいことが見られた。このような状況下では、母子家庭が閉鎖的な心理的空問となり、母子がお互いにネガティブな感情をぶつけあい、悪影響をおよぼす連鎖反応に入ってしまう。その後母子家庭が社会に向かって再度開かれ、そのような連鎖反応を脱し、子どもの問題行動が消失するというプロセスが見られた。また、母子密着状態から脱するに連れて、離れて暮らす父親との間に別のサブシステムが生まれることも見出された。2 親の離婚を経験した青年の語り親の離婚を経験した13名の青年に半構造化面接を行った。ナラティプアプローチによって、彼らが離婚後の危機を乗り越える物語を生成していることが見出された。それらの物語には、「問題の外在化」(離婚は親の問題であって、自分が悪いわけではないと認知すること)、「親役割の再認識」(両親が離婚しても、親としての機能は失わず続いていることを認識すること)、「自己選択」(父親との関わりを継続するかどうかは、自分で選択できること)「マイノリティアイデンティティ」(自分がマイノリティであるというアイデンティティを、特に思春期の時期において、抱くこと)という内的な方略が見られ、これらの方略によって、離婚後の危機を乗り越えていることが見出された。