著者
内田 立身 河内 康憲
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.436-439, 2014 (Released:2014-05-20)
参考文献数
13

鉄欠乏性貧血の症状としての異食症のうち氷食症について検討した。日本鉄バイオサイエンス学会の診断基準で診断した鉄欠乏性貧血81例を対象とした。鉄欠乏性貧血全例に氷食行為の有無を問診した。同時に他の異食症,組織鉄欠乏の所見,血液学的データを検索し,鉄治療後のこれらの経過を観察した。氷食症は,氷食行為が強迫的異常行為として見られるもの,鉄剤の投与で氷食行為が消失するものと定義した。その結果,81例中13例(16.0%)に氷食症が見られた。氷食症はヘモグロビン値,血清フェリチン値とは関係がなく,鉄剤の投与により比較的早期に改善した。氷食症は他の異食症が極めて稀なのに比して,日本人の鉄欠乏性貧血の症状としてよく見られることが判明した。氷食症の本態は不明であるが,中枢神経系の生化学的研究の必要性が示唆された。
著者
内田 立身 河内 康憲 渡辺 礼香 西原 利男 三宅 隆明
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.123-128, 1996 (Released:2009-04-28)
参考文献数
11
被引用文献数
1

鉄欠乏性貧血に対する静注療法については,投与鉄量の計算式として,わが国では古くから中尾の式が用いられてきた。中尾の式は,日本人の循環血液量を80 ml/kg, 貯蔵鉄量を17 mg/kgとして計算するが,今回,51Cr法および血清フェリチン値からの検討で,循環血液量65 ml/kg, 貯蔵鉄量500 mgが妥当であると考えられ,これらに基づき鉄投与量を3.4×(16-X)/100×65×体重+500 mg(X: 治療前のヘモグロビン値)あるいは[2.2 (16-X)+10]×体重mgと設定した。現実にこれに基づいて治療を行ったところ,ヘモグロビンの回復も順調で,その後の減少も持続出血のない例では認められないことから,鉄剤の静脈内投与量は,少なめに見積もった上式が適当であると結論した。