著者
河原 清志
出版者
文化女子大学
雑誌
文化女子大学紀要. 人文・社会科学研究 (ISSN:09197796)
巻号頁・発行日
no.19, pp.13-28, 2011-01-31

本稿は英語“as”の多義性について接続詞に限定して統一的な説明を試みるものである。「“as”は潜在的意味として, <現実に生起している(した)出来事>(後景情報)を主節とゆるい等価で結ぶ函数関係を示す」という意味を有し, スーパー・スキーマ(コア)が潜勢態としてあり, 2つのパラメーターの状況的関係の力学(as節と主節がそれぞれ指標する出来事の内容と指標野における位相関係)の中で語義が確定するという理論構成が可能である。具体的には「接続詞」の用法として,(1)〔時〕は「同時性」を基本とし,(a)瞬間的時間の場合は「偶発性」, (b)多少の時間の幅がある場合は「同時進行性」, (c)かなりの時間の幅がある場合は「連動性(比例性)」が前景化し, 動的な出来事どうしが「等価」で結ばれる。(2)〔理由〕は「状態性」が特徴で, 後景的状況・事情を表すas節は静的な出来事として主節と「等価」で結ばれる。その他, (3)〔様態〕, (4)〔逆接〕, (5)〔比較〕, (6)〔局面〕といった語義も「等価」から導かれることが観察され, 多義現象に対して語義の連続性のある説明が可能であることが確認された。