著者
河合 潜二
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集 (ISSN:02888610)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.51-58, 1962-03

1)1960年7月24日〜9月25日に,セット位置の高さの違った金網トラップで以てハエを採集し,採集位置の高さが採集能率に何らかの影響を及ぼすかどうかを調べた。2)トラップは全部で,2m・1.2m・1m・0.8m・0.4m・・0.3m・Om及び草むらの申のOmの位置にセットし,垂直に3〜4ヶを連結して同時に吊るした場合,各々の高さのものを8m間隔に離して同時においた場合,1つのトラップで毎日高さを変えた場合など,計5回の採集実験をおこない,トラップの機能上の差をなくすために,使ったトラップは各々の高さを1巡するようにした。実験場所は長崎市内にある活水高校の構内3地点である。3)3〜4ヶのトラップを連結垂下した場合,トラップの位置の高さによる採集ハエ数に著しい違いがあり,最下位の0〜0.3mのトラップが採集能率が最大であって約50〜90%のハエが集まる。そのうちの優占種はミドリキンバエである。4)2ヶのトラップが同時に地上にセットされ,その1が草の中におかれた場合,裸地のトラップにより多くのハエが集まる。このときの第1優占種はセンチニクバエ,第2優占種はミドリキンバエであって,共に裸地・草地の2トラップに大差ない割合で(僅かに裸地に多く〉集まっている。5)日を違えて1ヶのトラップをいろいろの高さにセットした場合,採れたハエ数の間には有意差が認められず,優占種であるオビキンバエはどの高さのトラップにもかなり似た割合で集まっている。6)ハエ誘引の餌の臭気についてみると,地上から高いところ程風が強いので臭気が速く拡散し,低いところでは風が弱いので臭気が停滞しがちとなる。だから高さ別のトラップを同時にセットすると,下位のもの程誘引力が優っていると考えられ,実験結果がそれに符合している。
著者
河合 潜二 和田 義人 大森 南三郎
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.58-64, 1967-03

Investigations on the swarm of Culex tritaeniorhynchus were carried out in the field in villages around Nagasaki and Isahaya Cities during from early spring through late autumn in 1965 and 1966. The swarms were ellipsoid, typically about 0.7×1.0-1.5m, in shape, and formed in the air at about 1.5m height, usually obliquely and sometimes right above the swells of grasses or shrubs; frequently by the dry ice traps; and sometimes under the eaves of animal sheds as shown in Figs.1 and 2. A swarm started usually at about sun-set and progressed through an increasing phase for 10 minutes, to a prosperous phase for some 15 minutes when the swarm contained one to two hundred males, and through a decreasing phase for some ten minutes they disappeared as shown in Fig.3. The starting time of the swarm was roughly parallel with the sunset time during the periods from April to June and after mid-October, while in from July to September the starting time became late by 10 to 15 minutes (Fig.4). When compared the seasonal prevalence of the population density in the swarms (males) which were found within a definite area and that of females which were found in a pig-shed, it was found that: In May and April, hibernated females were only found; from the end of April through the end of August the two prevalence curves passed over roughly in parallel; while, on September a sudden and great fall in the density of females took place and thereafter, in spite of near absence of females, the males continued to swarm till the beginning of November (Fig.5). The female rate to the total number of mosquitoes found in the typical swarm usually formed in the field was roughly 2.3% in an average and 9.1% in a maximal case. The rate was as high as 14.3% for average and 25.7% for maximum in the swarm formed by the dry ice traps probably owing to the joining to the swarm of the females which were attracted to CO_2 gas. The rate was intermediate between the above two in the case of the swarm formed under the eaves of animal-sheds. Seasonally, the rate was higher during the active feeding season of the mosquito than in those days when females had entered hibernation. During the process of swarming, the rate became higher in the decreasing phase owing to the gradual disappearing of males (Table 1). The swarm was formed at down, though for a shorter period and in a smaller scale than those formed in the evening. Within the swarm of this mosquito, mosquitoes of seven other species were found in a rare cases and in a very small numbers. The swarming of C. tritaeniorhynchus is considered to be closely related to the mating as mating is very frequently observed within the swarm.1. 1965, 1966年の早春から晩秋にかけて,長崎・諫早両市近郊の,数部落の水田地帯で,コガタアカイエカの群飛についての観察調査をおこなった.2.たけの高い草株,石垣,灌木,畜舎の軒先,水田わきに設置したドライアイストラップなどのように,周囲から一段と高く突出した物体の上または斜め上に,地上約1.5mの空間に,0.7×1.0~1.5mの楕円体として群飛の形成されることが多い.3.群飛は,一般に5-10個体に始まり,以後約10分間の段階的に増加する増加期,ふつう約100~200個体からなる15分間くらいの最盛期,約10分間の段階的な数の減少を示す減少期を経て解散に至る.4.群飛が,最初にみられた4月下旬から,最後にみられた11月下旬までを通じて,群飛の開始時刻は,大体においては日没時刻の季節的変化と平行的であるが,季節による歪みもみられる.すなわち,4~6月には群飛は日没頃に始まるが,7~9月には10~15分も遅く始まり,10月中旬以降は再び日没頃に開始される.5.一定方法で観察した群飛の,♂の個体群密度の季節的消長と,豚舎で定期的に採集した♀のそれとを比較すると,3~4月には越年♀だけが採集され,4月末新生成虫の発生以後は,♂と♀とはほぼ平行的に消長するが,9月に入ると♀は急激に減少しほとんど採れなくなる.しかし♂は9月にはなお盛んに活動しており,10月においてさえかなり活動して11月上旬まで続く.♀が越年に入ると思われる9月上旬以後,♂の群飛がなお11月上旬まで続いて観察されることは極めて興味のあることである.6.群飛中に見出だされる♀の割合については,時期により場所によって調査回数がまちまちであり非常に少ない場合もあるので,決定的な結論は下し得ないが,定期的な野外での群飛の場合には,最高9.1%,平均的には約2.3%であるが,♀を誘引するために設置したドライアイストラップ付近でのものでは最高25.7%,平均的には約14.3%と非常に高い.畜舎付近でみられるものでは,♀の比率がそれらあ中間にくる.季節的にみると,蚊の発生が盛んな時期に高く,10月以後は極めて低くなる.時間的には,群飛の減少期に特に高くなる傾向がみられる.7.朝方,日の出前約30分から,12~15分位のあいだ,小規模で継続時間の短かい群飛の生じることを確認した.8.本種の群飛中には,他の7種の蚊が採集されたが,そのような例は比較的稀であり,個体数も極めて少ない.
著者
河合 潜二
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集 (ISSN:02888610)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.23-27, 1963-03

1)1961年7〜11月と1962年8〜10月に,キンバエ,ニクバエ,およびイエバエの,3令幼虫を水の中へ入れて,その様子を観察した。2)イエバエ幼虫を水に入れると,殆んど悉くが沈み,どんな条件のときも,水に浮く能力はもち得ないし,水に対するその他の適応性も示さなかった。3)キンバエ幼虫とニクバエ幼虫では,虫体に水がふれると,数秒から数分の間に,嘴から空気を消化管内に入れて気胞を生じ,そのために虫体の浮く現象がみられた。水にふれるときの条件によって,気胞発生に遅速はあるが,イエバエ幼虫で気胞が認められないのに比べ顕著なちがいである。4)キンバエ幼虫とニクバエ幼虫が水面に浮かぶと,後部気門で空気呼吸をしてかなり長時間生き,その間,水面の物体にはい上った。イエバエ幼虫ではこのことが確認されなかった。5)水に沈んだ幼虫は,5〜20分間水底をはい廻り,水申の物体をはい上るが,垂直な面を上ることはなく,次第に動かなくなって,30時間内には死ぬ。6)便池を主な生活圏としている,特にニクバエ幼虫の,水に対する適応を阻害するような方向に,便池の構造を改めるべきである。