著者
河島 常裕 玉木 彰 木村 雅彦 石川 朗
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.D0851, 2007

【はじめに】<BR>アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(以下ABPA)は、気管支内にアスペルギルスが腐生しアスペルギルス抗原に対するアレルギー反応で、多量の喀痰と喘息様発作、肺浸潤を繰り返す疾患であり、急性増悪を予防するためには喀痰喀出が重要である。今回、毎日の喀痰喀出が必要な症例において、修学旅行先で理学療法士の連携により無事に修学旅行を終了できた症例を経験したので報告する。<BR>【症例および経過】<BR>16歳女性。疾患名:ABPA。小学生の頃から「喘息」「副鼻腔炎」と言われ、治療を受けてきたが改善が見られず、平成16年12月近医にてABPAと診断され、平成17年5月当院初診。以降、当院にて内服治療、排痰を中心とした呼吸理学療法、家庭内での排痰手技、生活指導等を実施。その後ABPAの急性増悪と肺炎を発症し入退院を繰り返す。平成18年2月、右肺全摘術の外科的治療を考慮して入院。医師から本人、家族に対して厳しい病状説明があったが、結果的に外科的治療はせず、内服治療と呼吸理学療法を続けていく方針となる。8月、本人の高校入学時からの楽しみであった、北海道から京都、東京への修学旅行を迎えるにあたり、「人生最後の旅行になるかもしれない」「どうしても行かせてあげたい」という家族や当院スタッフの意向により準備を開始した。学校側とは担任教諭、学年主任、養護教諭と十分に話し合いをもち、緊急対応時などの確認などを行った。学校側は非常に協力的であり、旅行会社、航空会社に対して協力を依頼。病院側からは病状の急性増悪を防ぐための薬物調整、緊急時の紹介状の発行、連絡体制の確認、旅行先でのリハビリテーション支援体制の依頼などを行った。リハビリテーション支援体制においては、修学旅行のスケジュールや本人の体調を考慮して、一日おきに実施できるように調整した。また、旅行先では本人、担任教師、滞在地の担当理学療法士、当院理学療法士と常に24時間連絡が取れる体制をとった。その結果、京都、東京の滞在ホテルにて各1時間排痰を実施し、4泊5日の修学旅行をトラブルなく終了できた。<BR>【考察】<BR>毎日、昼は学校の保健室での自己喀痰、朝と夜は母親の排痰手技による痰の喀出を行っており、自分だけでは不十分である。加えて、修学旅行では活動量の増加、生活パターンの変化、環境の変化などにより、急性増悪が予想された。これに対し、一日おきにPTでの対応、緊急時の体制を確立することにより、無事に終了できたと考えられる。今回は、すべてボランティアでの対応であり、特別な症例と考える。しかし、QOL向上のためには適切な対応であったと思われる。<BR>