著者
新城 拓也 清水 政克 小林 重行 濱野 聖二 岡野 亨 中村 宏臣 石川 朗宏 関本 雅子 槇村 博之 本庄 昭 神戸市医師会 在宅医療懇談会
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.107-113, 2014 (Released:2014-02-04)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

【目的】本研究の目的は, 神戸市内の医師が感じている, 在宅医療に関する困難・負担感の実態を調査することである. 【方法】神戸市内の医療機関を対象に, 2013年7月に質問紙を発送した. 【結果】神戸市内の医療機関1,589施設に発送し, 899施設から返答を得た (返答率 57%). 主調査項目に対して, 返答のあった807施設(51%)を解析対象とした. そのうち, 在宅医療に対する困難・負担感は「かなり感じている」(30%), 「少し感じている」 (31%)であった. 困難の決定因子として, 医師の年齢が80歳以上(P=0.05), 在宅医療に関しての困難として「特定の医療処置」(P=0.036), 「他医療機関・介護職との連携」(P=0.002), 「時間と人員の確保」(P<0.001)が分かった. 【結論】過半数の医療機関で在宅医療に困難・負担感を感じていることが分かった.
著者
松村 拓郎 三谷 有司 沖 侑大郎 藤本 由香里 石川 朗
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.364-368, 2014 (Released:2014-10-20)
参考文献数
26
被引用文献数
1 14

目的:肺炎は脳血管障害患者に好発する合併症の1つであり,その発生機序の多くが誤嚥性肺炎である.誤嚥性肺炎は口腔内細菌叢の誤嚥による侵襲と咳嗽反射や免疫能などの宿主の抵抗反応のバランスの崩壊によって発症するとされる.しかし,現在までの報告の多くが誤嚥や嚥下障害に着目したものであり,宿主抵抗に関する報告は乏しい.本研究では,嚥下障害を有する脳血管障害患者のみを対象として,誤嚥性肺炎発症における宿主抵抗の重要性について検討した.方法:脳梗塞または脳出血の診断を受け,回復期リハビリテーション施設4病院に新規入院した175名のうち,入院時点で嚥下障害を有していた76名(平均年齢74.7±8.4歳,男性29名)を対象とした.対象者を入院期間中の肺炎発症の有無により2群に分類し,2群間で入院時の特徴を後方視的に比較・検討した.結果:入院期間中に肺炎を発症したのは10名(13.2%)であり,そのすべてが65歳以上の高齢者であった.2群間の比較では性別,活動レベル,血清アルブミン,食事形態,嚥下障害重症度の項目で有意差がみとめられた(p<0.05).結論:本研究から嚥下障害を有する脳血管障害の肺炎発症要因として女性,臥床,低栄養状態,経管栄養,重度嚥下障害の存在が挙げられた.誤嚥性肺炎発症は嚥下障害と非常に密接に関係している一方で,臥床や低栄養状態などの宿主抵抗も重要な関連因子であることが示された.
著者
新城 拓也 石川 朗宏 五島 正裕
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.141-146, 2015 (Released:2015-02-25)
参考文献数
33

終末期がん患者の治療困難な苦痛に鎮静が必要なことがある.日本の在宅療養中の患者に対する鎮静についての報告は,ほとんどない.本研究の目的は,在宅療養中のがん患者に対する鎮静の状況を調査することである.しんじょう医院で,在宅で緩和ケアを提供された,2012年8月から2014年7月までに診療が終了した117例のがん患者のカルテを後方視的に調査した.死亡したがん患者は98例で,自宅で鎮静が行われたのは自宅で死亡した73名のうちの24名(33%),平均期間は,4.4±6.0日,投与薬剤はすべてミダゾラムであった.ミダゾラムの初期投与量は,12.8±6.2 mg/日,最終投与量は,12.4±6.5 mg/日であった.鎮静の対象となった症状は,せん妄が22例であった.在宅療養中のがん患者に,鎮静は必要な治療で,在宅チームが治療,ケアを常時討議することで,適切かつ安全に実施できることが分かった.
著者
植木 純 神津 玲 大平 徹郎 桂 秀樹 黒澤 一 安藤 守秀 佐野 裕子 佐野 恵美香 石川 朗 高橋 仁美 北川 知佳 玉木 彰 関川 清一 吉川 雅則 津田 徹
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.95-114, 2018-05-01 (Released:2018-09-20)
参考文献数
115
被引用文献数
10

呼吸リハビリテーションとは,呼吸器に関連した病気を持つ患者が,可能な限り疾患の進行を予防あるいは健康状態を回復・維持するため,医療者と協働的なパートナーシップのもとに疾患を自身で管理して自立できるよう生涯にわたり継続して支援していくための個別化された包括的介入である.呼吸リハビリテーションは原則としてチーム医療であり,専門のヘルスケアプロフェッショナルすなわち,医師,看護師,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,臨床工学技士,管理栄養士,歯科医師,歯科衛生士,医療ソーシャルワーカー,薬剤師,保健師,公認心理師,ケアマネージャー等の参加により,あるいは必要に応じて患者を支援する家族やボランティアも参加し行われるものである.また,呼吸リハビリテーションは病態に応じて維持期(生活期)から終末期まで,急性期,回復時,周術期や術後回復期も含むシームレスな介入である.介入に際しては,評価に基づきコンディショニングを併用した運動療法を中心として,ADLトレーニングを組み入れ,セルフマネジメント教育,栄養指導,心理社会的支援等を含む包括的な個別化プログラムを作成,実践する.達成目標や行動計画を医療者と協働しながら作成し,問題解決のスキルを高め,自信をつけることにより健康を増進・維持するための行動変容をもたらすよう支援する.継続への指導は再評価に基づき行い,身体活動の向上を重視する.呼吸リハビリテーションは息切れを軽減,健康関連QOLやADL,不安・抑うつを改善させ,入院回数・日数を減少させる等の有益な治療介入であり,適応のあるすべての呼吸器に関連した病気を持つ患者に実施される必要がある.
著者
佐藤 友亮 新城 拓也 石川 朗宏 五島 正裕 関本 雅子 森本 有里
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.162-167, 2015 (Released:2015-03-06)
参考文献数
20
被引用文献数
1

在宅療養をしていた終末期がん患者の,食事と補完代替療法の現状調査を行った.神戸の5診療所で治療され,自宅で死亡した200名を対象に,患者遺族に質問紙を2014年2月に発送した.回収率は66%,患者の平均年齢は74歳だった.食事や食品の情報入手先を問う質問では,書籍・雑誌・新聞(48%),医療者(46%)という回答が多かった.積極的に摂取した食材は,お茶(64%),乳製品(62%),大豆食品(60%),制限した食材は,アルコール(49%),脂質(31%),塩分(31%)という回答が多かった.補完代替療法を43名(32%)の患者が取り入れており,サプリメント,ビタミン剤(28%)が多かった.がん患者は,一般的に健康に良いと考えられているものを摂取していた.終末期がん患者の食事,補完代替療法には科学的根拠が乏しいため,今後の研究が必要である.
著者
新城 拓也 清水 政克 三宅 敬二郎 田村 学 遠矢 純一郎 白山 宏人 松木 孝道 石川 朗宏 村岡 泰典 濵野 淳
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.259-263, 2020 (Released:2020-10-08)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究は日本国内における,自宅で死亡したがん患者の状況,医師や看護師の死亡時の立ち会いについて調査することを目的とした.国内の在宅医療と緩和ケアを提供している診療所で,2017年7月1日から2017年12月31日の間に,自宅で訪問診療を受ける終末期のがん患者を対象に,前向きの観察研究を行った.診療した医師が,初診時と死亡時に,患者背景,治療内容,死亡時の状況を評価した.調査期間中に,45の診療所で死亡場所が自宅であった患者676人の死亡状況を解析した.同居者がいた患者は91%,休日と夜間の死亡は49%(95%信頼区間[45〜52%]),死亡時の医師,看護師の立ち会い(呼吸停止,心停止の前から継続して患者の家にいること)はそれぞれ5.6%,9.9%であった.自宅で亡くなった患者のほとんどは家族と同居し,死亡時の医師や看護師の立ち会いはほとんどなかった.
著者
山口 卓巳 沖 侑大郎 沖 由香里 大平 峰子 石川 朗
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.160-167, 2023-04-15 (Released:2023-04-15)
参考文献数
30

本研究の目的は,AMPSを用い在宅COPD患者の動作特性を明らかにすることと,COPD特有の重要なアウトカムとの関連性を明らかにすることである.対象は,在宅酸素療法未導入かつ自宅でAMPSが測定できた13例とした.呼吸機能検査,mMRC息切れスケール,CAT,NRADL,PFSDQ-m,AMPSを測定し,AMPSと各項目測定値との相関を検討した.結果,AMPSの運動技能・プロセス技能ともにCAT,NRADL,PFSDQ-mと相関を認めた.またAMPS運動技能は呼吸機能,mMRC息切れスケールとも相関を認めた.AMPSは既存の疾患特異的ADL尺度と相関を認めたことから,COPD患者のADL能力を反映することが示唆された.
著者
髙橋 一揮 藤沢 拓也 佐藤 光 菊地 優太 鈴木 沙斗美 松本 栞 沖 侑大郎 石川 朗 藤澤 宏幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0578, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】足踏み運動は,麻痺の改善や歩行能力改善など運動の中に多く取り入れられている。しかし,その運動強度に関して詳細な検討はなされていない。そのため,本研究では1分間当たりの足踏み回数(以下,ステップピッチ)と上肢支持の有無を変数として運動強度を中心に呼吸循環応答を検討することとした。【方法】対象者は健常若年成人女性13名であった。測定は運動負荷試験と足踏み運動とし,それぞれ別日に実施した。運動負荷試験は自転車エルゴメータを用いたramp負荷試験(10W/min)とした。一方,足踏み運動は股関節屈曲角度を45度と設定して算出した高さに紐を張り,対象者には紐に軽く触れるまで脚を上げるよう指示し,鏡を使用してフィードバックを促した。足踏み試験の設定条件はステップピッチ60・90・120(以下,P60・P90・p120)の3条件と上肢支持(手すり)の有無の2条件の計6条件としてランダムにて実施した。なお,ステップピッチはメトロノームを用いてコントロールし,上肢支持の手すりは大転子の高さとした。測定プロトコールは各条件の足踏み運動を3分間,休憩3分間を繰り返した。データは酸素摂取量を中心に呼吸循環パラメータを呼気ガス分析装置にて測定し,各条件終了直前の30秒間を平均化して代表値とした。統計処理は,R(3.2.1)を使用し,呼吸循環パラメータに関して上肢支持の有無による2要因について2元配置分散分析を,host-poc testとしてHolm法を用い,有意水準は5%未満とした。【結果】運動負荷試験の結果,平均最高酸素摂取量は23.3±3.4mi/kg/min,平均ATは12.2±2.1ml/kg/minであり,比較的低体力層であった。足踏み運動の結果では,酸素摂取量にてステップピッチと上肢支持の有無には有意な主効果が認められたが,交互作用は認められなかった。多重比較では,P60・P90・P120間にいずれも有意差が認められ,P60では上肢支持無が有に対して有意に高値を示した。他の呼吸循環パラメータも類似傾向を示した。また,各条件におけるMETsと%ATでは上肢支持の有無による違いは小さく,P60(約2.5METs/約75%),P90(約3.0METs/約85%),P120(約3.5METs/約100%)であった。また,歩行率から算出した健常者の相対的平均歩行速度でのMETsと比較したところ,いずれのステップピッチにおいても足踏み試験が低値であった。【結論】本研究は対象が若年成人女性であったが,体力は60歳男性に相当していた。この対象者において,ステップピッチが増加することにより有意に呼吸循環応答が増大したが歩行に比して低負荷であったこと,ならびに,おおよそATレベルまで運動として容易に実施できる可能性を示した。よって,ステップピッチを変数とすることで合目的であり運動耐容能改善の方法となりうることを示唆した。
著者
管野 敦哉 横串 算敏 谷口 志穂 澤田 篤史 成松 英智 丹野 克俊 岡本 博之 石川 朗
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.D0677, 2005

【はじめに】陽・陰圧体外式人工呼吸器(以下、RTX)は非侵襲的であり,陰圧による吸気の介助に加え,陽圧による呼気の介助が可能であることが特徴の人工呼吸器である。この呼吸器は急性期から慢性期,在宅での呼吸管理に使用することが可能とされており注目を集めている。当院では急性呼吸不全患者に対する人工呼吸管理の他,神経筋疾患患者の排痰介助などに使用されている.今回、当院高度救命センターに搬入された3名の患者に対し,呼吸理学療法と併用する機会を得たのでここに報告する.<BR>【症例1】30歳,女性.外傷性くも膜下出血,肺挫傷.平成16年4月13日,バイク転倒にて受傷.CTで両背側下葉に無気肺が認められ,気管内挿管され,理学療法開始となる.第3病日,無気肺が改善し,抜管するもSpO<SUB>2</SUB>の低下が見られ,RTXを使用する.30分間の装着後,PaO<SUB>2</SUB>が 68.7mmHgから98.0mmHgに改善し,第9病日に転院した.<BR>【症例2】50歳,男性.気道熱傷,一酸化炭素中毒.平成16年4月20日,火災現場で発見され,当院搬入される.直ちに高圧酸素療法施行し,気管内挿管され,理学療法開始となる.第4病日,抜管されるも,酸素化不良,排痰困難のためRTXを使用する.30分間を2回装着した後,すす混じりの痰が多量に排出され,PaO<SUB>2</SUB>が76.7mmHgから158.2mmHgに改善し,第9病日に独歩で退院した. <BR>【症例3】22歳,女性.溺水,肺炎.統合失調症にて他院に入院中.平成16年6月1日,外泊中に川に飛び込み受傷.E病院から当院救命センターに搬入される.酸素投与で経過観察されていたが,CT上両背側に無気肺,肺炎が認められ,呼吸理学療法を開始しRTXも使用する.約1時間の装着後,PaO<SUB>2</SUB>が 88.5mmHgから133.5mmHgに改善し,人工呼吸管理も行なわれず,第9病日に転院した.<BR>【考察】救急医療現場における呼吸管理の問題として,人工呼吸器からの離脱,抜管後の気道閉塞や低酸素血症,排痰困難などがある。その問題に対し,呼気介助や排痰手技などの呼吸理学療法を行うことが一般的になっている.しかし、最近ではそれに加え酸素投与前の再挿入管回避として非侵襲的人工呼吸管理が行われる場合がある.今回使用したRTXは食事や会話などが可能であるなどの特徴がある.それに加え,呼気や排痰の介助が長時間にわたり集中的に可能であるということから呼吸理学療法の役目を担う一面も特徴として挙げられる.今回の3症例では30分から1時間の使用でPaO<SUB>2</SUB>が改善し,その後も順調な経過をたどったと考える.しかしRTXを救急医療現場で使用した報告は少なく,適応疾患や使用時間,モードの使い分けなどには更なる検討が必要と思われる.
著者
河島 常裕 玉木 彰 木村 雅彦 石川 朗
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.D0851, 2007

【はじめに】<BR>アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(以下ABPA)は、気管支内にアスペルギルスが腐生しアスペルギルス抗原に対するアレルギー反応で、多量の喀痰と喘息様発作、肺浸潤を繰り返す疾患であり、急性増悪を予防するためには喀痰喀出が重要である。今回、毎日の喀痰喀出が必要な症例において、修学旅行先で理学療法士の連携により無事に修学旅行を終了できた症例を経験したので報告する。<BR>【症例および経過】<BR>16歳女性。疾患名:ABPA。小学生の頃から「喘息」「副鼻腔炎」と言われ、治療を受けてきたが改善が見られず、平成16年12月近医にてABPAと診断され、平成17年5月当院初診。以降、当院にて内服治療、排痰を中心とした呼吸理学療法、家庭内での排痰手技、生活指導等を実施。その後ABPAの急性増悪と肺炎を発症し入退院を繰り返す。平成18年2月、右肺全摘術の外科的治療を考慮して入院。医師から本人、家族に対して厳しい病状説明があったが、結果的に外科的治療はせず、内服治療と呼吸理学療法を続けていく方針となる。8月、本人の高校入学時からの楽しみであった、北海道から京都、東京への修学旅行を迎えるにあたり、「人生最後の旅行になるかもしれない」「どうしても行かせてあげたい」という家族や当院スタッフの意向により準備を開始した。学校側とは担任教諭、学年主任、養護教諭と十分に話し合いをもち、緊急対応時などの確認などを行った。学校側は非常に協力的であり、旅行会社、航空会社に対して協力を依頼。病院側からは病状の急性増悪を防ぐための薬物調整、緊急時の紹介状の発行、連絡体制の確認、旅行先でのリハビリテーション支援体制の依頼などを行った。リハビリテーション支援体制においては、修学旅行のスケジュールや本人の体調を考慮して、一日おきに実施できるように調整した。また、旅行先では本人、担任教師、滞在地の担当理学療法士、当院理学療法士と常に24時間連絡が取れる体制をとった。その結果、京都、東京の滞在ホテルにて各1時間排痰を実施し、4泊5日の修学旅行をトラブルなく終了できた。<BR>【考察】<BR>毎日、昼は学校の保健室での自己喀痰、朝と夜は母親の排痰手技による痰の喀出を行っており、自分だけでは不十分である。加えて、修学旅行では活動量の増加、生活パターンの変化、環境の変化などにより、急性増悪が予想された。これに対し、一日おきにPTでの対応、緊急時の体制を確立することにより、無事に終了できたと考えられる。今回は、すべてボランティアでの対応であり、特別な症例と考える。しかし、QOL向上のためには適切な対応であったと思われる。<BR>
著者
大橋 啓太 小野 くみ子 川手 勇也 渡瀬 涼 石川 朗
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.303-309, 2018-08-01 (Released:2018-07-18)
参考文献数
16

The aim of this study was to investigate the effects of the difference in the ways to carry a baby using a baby carrier on the respiratory response during upslope walking. Fourteen healthy adults participated in this study. We set the individualized walking speed at 30% of the maximum oxygen uptake at 0% grade. The test began at 0% grade walking on the treadmill and increased by 2% every 5 min until 8%. The test was performed randomly in these two conditions: holding an infant model weighing approximately 15% of body weight in front of the subject with a baby carrier (F) and backpack with a baby carrier (B). Heart rate (HR), oxygen uptake (VO2), minute ventilation (VE), tidal volume (TV), respiratory exchange ratio (R), and respiratory rate (RR) were measured and the values from the last 1 min of each grade were averaged. HR, VO2, VE, TV, R, and RR significantly increased with increasing grade in each condition. There were no significant differences in interaction effects in HR, VO2, VE, TV, R, and RR. This study suggests that the difference in the ways to carry a baby using a baby carrier has no effects on the respiratory response during upslope walking at a speed corresponding to 30% of the maximum oxygen uptake at 0% grade until 8% grade.
著者
大橋 啓太 藤原 芽生 小野 くみ子 石川 朗
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】スタティックストレッチングがもたらす効果として,リラクセーション効果がある。リラクセーション効果を目的としたスタティックストレッチングに関する研究では,5分から10分程度のストレッチングプログラムを実施した場合のリラクセーション効果についての報告はあるが,一般的に推奨されている30秒程度のスタティックストレッチングがもたらすリラクセーション効果に関する報告は見当たらない。そこで,本研究ではスタティックストレッチングの伸張時間の違いが,自律神経活動に及ぼす影響について検討することを目的とした。</p><p></p><p>【方法】9名の健常若年成人男性を対象とした。実験に先立ち,膝関節伸展位での股関節屈曲(SLR)可動域(ROM)を測定し,そこから3度減じた角度をストレッチング実施角度に決定した。実験は,5分間の安静背臥位(PRE)後,スタティックストレッチングとしてSLR(ST)を行い,その後5分間の安静背臥位(POST)を行い,終了とした。実験条件は,ストレッチングを10秒間(10秒条件),30秒間(30秒条件),60秒間(60秒条件)それぞれ行う3条件に加え,安静背臥位を保持する条件(CON条件)の計4条件を設定した。実験を通して,心拍数(HR)および心臓副交感神経系活動(lnHF)の測定を行い,効果判定として実験後にSLRのROM測定を行った。さらに,交感神経活動指標として唾液アミラーゼ活性(SAA)を,PREの最後の1分間,ST直後1分間,POST終了後1分間,それぞれ唾液を採取して測定した。ST実施角度決定時およびST時の自覚的伸張感はVisual Analog Scale(VAS)を用いて測定した。データ処理として,PREにおける測定値は,最初と最後の1分間を除いた3分間の平均値を,STにおける測定値は,それぞれの条件の後半の10秒間の平均値を,POSTにおける測定値は5分間の平均値をそれぞれ算出し,比較検討した。</p><p></p><p>【結果】ROMは,30秒条件(P<0.01)および60秒条件(P<0.05)において実験前と比較して実験後に有意に増大した。VASは,各条件においてストレッチ角度決定時およびST時に有意差を認めなかった。HRは,時間および条件の交互作用に有意差を認め(P<0.01),10秒条件においてPREおよびPOSTと比較してST時に有意な上昇を認めた(P<0.01)。lnHFは,PREと比較してST時に有意に上昇した(P<0.01)が,条件間および交互作用には有意差を認めなかった。SAAは,条件,時間,交互作用とも有意差を認めなかった。</p><p></p><p>【結論】リラクセーション効果を目的としたスタティックストレッチングの伸張時間について,60秒までの短時間のスタティックストレッチングでは,伸張時間の違いによる自律神経活動,特に副交感神経活動への有意な影響は認められず,リラクセーション効果を目的とした場合は,少なくとも60秒よりも長い時間のスタティックストレッチングを実施する必要があることが示唆された。</p>
著者
森本 有里 新城 拓也 関本 雅子 東川 俊昭 新國 雅史 大石 麻利子 石川 朗宏 槇村 博之 置塩 隆 岡田 泰長 本庄 昭
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.120-124, 2015 (Released:2015-02-05)
参考文献数
11

【目的】高齢者福祉施設の看取りと終末期ケアの現状把握をするために実態調査を行った.【方法】神戸市内の高齢者福祉施設350施設を対象に質問紙調査を実施した.【結果】350施設のうち314施設(回収率89.7%)から回答を得た.看取りを実施している121施設(39%),看取りに対して取り組む意思がある151施設(48%),胃瘻造設した入居者がいる152施設(48%),点滴可能183施設(58%),医療用麻薬使用可能72施設(23%)であった.【結論】高齢者福祉施設のうち看取りを実施している所は半数に満たないことが分かった.また医療的処置として胃瘻,点滴は半数程度の施設で対応可能だが,医療用麻薬を使える施設は少ないことが分かった.