著者
河本 光祐 佐藤 至 吉田 緑 津田 修治
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第37回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.142, 2010 (Released:2010-08-18)

【背景】近年,空気中のウィルスや細菌を不活化する機能をもった空気清浄機が多数市販されている。このような空気清浄機の多くはスー パーオキサイドやヒドロキシラジカルを放出することによってその機能を発揮するが,これらの活性酸素は生物にとって有害であるた め,暴露条件によっては人体に害を及ぼすおそれがないとは言いきれない。そこで本研究では,A,B,C,3社の空気清浄機について, その安全性を検討した。 【方法】実験動物は8週齢のICR系の雄マウスを1群5匹として用いた。AとBについては空気清浄機の出口にビニール製のダクトを付け, その中で暴露した。Cはファンを装備していないため,45cm角のインキュベーター内で暴露した。16時間または48時間暴露後に肺を 採取し,DNA損傷(Comet法)を中心に肺への影響を検討した。 【結果】48時間暴露ではAとBで,16時間暴露ではBで有意なDNA損傷が確認された。CではDNA損傷は認められなかった。 【結語】メーカーでは遺伝毒性を含む各種の試験によって製品の安全性を確認している旨公表しているが,機種および暴露条件によって は肺に障害を与える可能性が確認された。当日は病理組織学的所見等とあわせて考察する予定である。
著者
佐藤 至 河本 光祐 西川 裕夫 齋藤 憲光 大網 一則 金 一和 津田 修治
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第33回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.101, 2006 (Released:2006-06-23)

【目的】パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)ならびにパーフルオロオクタン酸(PFOA)は界面活性剤の一種であり,合成樹脂原料,撥水・撥油剤,コーティング剤など,様々な用途に使用されている。これらは極めて安定性が高いために環境中に長期間残留し,人や多くの野生動物においても蓄積が確認されていることから残留性有機汚染物質に区分される。これらの物質の毒性については肝障害や発癌性などが指摘されているが,未だ十分な情報が得られていない。このため本研究ではPFOSおよびPFOAの神経毒性について検討した。【方法】Wistar系雄ラットまたはICR系雄マウスにPFOSまたはPFOAを経口投与し,一般症状を観察するとともに超音波刺激に対する反応を観察した。また,PFOSを50-200 mg/kg経口投与したラットの大脳皮質,海馬および小脳にニッスル染色を施し,病理組織学的検索を行った。【結 果】PFOSおよびPFOAのマウスおよびラットに対する致死量は約500 mg/kgであった。これ以下の投与量では一時的な体重の減少または増加の抑制が認められたが,その他の一般症状に著変は見られなかった。しかし,PFOSを投与した動物では超音波刺激によって強直性痙攣が誘発された。この痙攣は超音波刺激前にジアゼパムを投与しても抑制されなかった。一方ゾウリムシにおいてPFOSと同じ後退遊泳作用を有したSodium Dodecyl Sulfate(SDS)ならびにSodium Dodecanoylsalcosinateは痙攣を引き起こさなかった。PFOS投与24時間後の脳組織(大脳皮質,海馬,小脳)において,神経突起の短縮または消失,ニッスル小体の減少などの変化が用量依存性に認められた。これらの結果からPFOSは神経毒性を有すると結論される。