著者
佐藤 至 河本 光祐 西川 裕夫 齋藤 憲光 大網 一則 金 一和 津田 修治
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第33回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.101, 2006 (Released:2006-06-23)

【目的】パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)ならびにパーフルオロオクタン酸(PFOA)は界面活性剤の一種であり,合成樹脂原料,撥水・撥油剤,コーティング剤など,様々な用途に使用されている。これらは極めて安定性が高いために環境中に長期間残留し,人や多くの野生動物においても蓄積が確認されていることから残留性有機汚染物質に区分される。これらの物質の毒性については肝障害や発癌性などが指摘されているが,未だ十分な情報が得られていない。このため本研究ではPFOSおよびPFOAの神経毒性について検討した。【方法】Wistar系雄ラットまたはICR系雄マウスにPFOSまたはPFOAを経口投与し,一般症状を観察するとともに超音波刺激に対する反応を観察した。また,PFOSを50-200 mg/kg経口投与したラットの大脳皮質,海馬および小脳にニッスル染色を施し,病理組織学的検索を行った。【結 果】PFOSおよびPFOAのマウスおよびラットに対する致死量は約500 mg/kgであった。これ以下の投与量では一時的な体重の減少または増加の抑制が認められたが,その他の一般症状に著変は見られなかった。しかし,PFOSを投与した動物では超音波刺激によって強直性痙攣が誘発された。この痙攣は超音波刺激前にジアゼパムを投与しても抑制されなかった。一方ゾウリムシにおいてPFOSと同じ後退遊泳作用を有したSodium Dodecyl Sulfate(SDS)ならびにSodium Dodecanoylsalcosinateは痙攣を引き起こさなかった。PFOS投与24時間後の脳組織(大脳皮質,海馬,小脳)において,神経突起の短縮または消失,ニッスル小体の減少などの変化が用量依存性に認められた。これらの結果からPFOSは神経毒性を有すると結論される。
著者
佐藤 至 西川 裕夫 齋藤 憲光 金 一和 大網 一則 津田 修治
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第32回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.75, 2005 (Released:2005-06-08)

【目 的】パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やパーフルオロオクタン酸(PFOA)は合成樹脂原料,撥水剤,コーティング剤など,様々な用途に使用されている。これらは極めて安定性が高いために環境中に長期間残留し,人や多くの野生動物においても蓄積が確認されているが,その毒性については十分な情報が得られていない。このため本研究ではマウスなどの実験動物とゾウリムシを用いてPFOSおよびPFOAの神経毒性について検討した。【方 法】8〜9週齢のWistar系雄ラットまたはICR系雄マウスにPFOSまたはPFOAを経口投与し,一般症状を観察するとともに超音波刺激に対する反応を観察した。また,ゾウリムシをPFOSまたはPFOAを含む種々の溶液に入れ,遊泳行動の変化を観察することにより毒性評価を行った。【結 果】PFOSおよびPFOAのマウスおよびラットに対する致死量は約500 mg/kgであった。これ以下の投与量では一時的な体重の減少または増加の抑制が認められたが,その他の一般症状に著変は見られなかった。しかし,PFOSはマウスで125 mg/kg以上,ラットでは250 mg/kg以上で超音波刺激による強直性痙攣を誘発した。PFOSによる痙攣は超音波刺激2時間前にジアゼパムまたはニフェジピンを投与しても抑制されなかった。一方PFOSおよびPFOAはゾウリムシに対して後退遊泳を誘発し,膜電位あるいは細胞内カルシウムに対する影響が示唆された。後退遊泳誘発作用はPFOAよりもPFOSの方が強かった。ジアゼパムおよび数種のCa2+チャンネルブロッカーは高カリウムによる後退遊泳は抑制したが,PFOSによる後退遊泳は抑制しなかった。また低カルシウム溶液中ではPFOSによる後退遊泳が増強された。以上の結果からPFOSは細胞外カルシウムの取り込みによらずに神経毒性を示す可能性が示唆された。