著者
河本 幸子 岡崎 眞奈美 西川 真理子 平岩 弘 岸本 悦央 森田 学 渡邊 達夫
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.685-690, 1998-10-30 (Released:2017-10-27)
参考文献数
17
被引用文献数
8

岡山大学歯学部附属病院予防歯科診療室では,患者に定期的来院を促し,術者による徹底した歯口清掃(Professional toothbrushing)を中心とする歯周治療を行っている。本研究では,予防歯科診療により歯の喪失がどの程度抑えられたのかについて,同附属病院内の他診療科で歯周治療を受けている外来患者の場合と比較した。1982年から1989年までの間に,当病院を6年以上継続来院して歯周治療を受けた者を対象に,予防歯科で歯周治療を受けた患者群と,他科で歯周治療を受けた患者群(対照群)とに分類した。両群間で治療開始時の年齢,性別,現在歯数をマツチングし,各群112名(男性30名,女性82名,平均年齢45.4歳)の6年間の歯の喪失状況を比較した。その結果,1.予防歯科受診者群の喪失歯の総計は91本,対照群では189本であり,予防歯科受診者群の歯の喪失は,対照群の約48%に抑えられていた。2.年代別では40,50歳台,歯種別では前歯部,特に下顎前歯部で,予防歯科受診者群の喪失歯数が抑えられていた。3.6年間の予防歯科受診者群の平均来院回数は対照群の約1.7倍であった。また,対照群と比較して,歯周外科処置の割合が少なかった。以上のことから,術者による徹底した歯口清掃を定期的に行う予防歯科診療は,歯周病罹患歯の保存に有効であることが示された。