著者
渡辺 美鈴 渡辺 丈眞 松浦 尊麿 河村 圭子 河野 公一
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.99-105, 2005-01-25 (Released:2011-03-02)
参考文献数
18
被引用文献数
20 17

自立生活の在宅高齢者において, 外出頻度から判定した閉じこもりが要介護に移行するか, また低水準の社会交流がより強く要介護状態の発生を増幅するのかを明らかにするために, 閉じこもりおよびその状態像から要介護の発生状況を検討した.平成12年10月に兵庫県五色町の65歳以上の自立生活の在宅高齢者を対象 (2,046人) に閉じこもりに関する質問紙調査を行った. その後平成15年3月末日まで追跡し (追跡期間: 30カ月), 要介護移行について調査した. 閉じこもりの判定には外出頻度を用い, 1週間に1回程度以下の外出しかしない者を「閉じこもり」とし, 外出介助と社会交流を組み合わせた閉じこもり状態像をIからIVに分類した.「閉じこもりI」は一人で外出困難かつ社会交流はある,「閉じこもりII」は一人で外出困難かつ社会交流はない,「閉じこもりIII」は一人で外出可能かつ社会交流はある,「閉じこもりIV」は一人で外出可能かつ社会交流はないとした.本地域において, 自立生活の在宅高齢者の閉じこもり率は7.5%, 30カ月追跡後の要介護移行率は12.7%であった. 閉じこもりの約半数は閉じこもりIIIであった. 閉じこもり群は非閉じこもり群に比べて有意に高い要介護移行率を示した. 年齢別にみた見た場合, 85歳未満の高齢者においては, 閉じこもり群からの要介護移行率は非閉じこもり群に比べて有意に高率であったが, 85歳以上では, 両者の間に有意差を認めなかった. 閉じこもりの状態像別では非閉じこもり群と比較してどの群も高い要介護移行率を示した. 社会交流のない群はある群と比べて (IIとI, IVとIII), 要介護移行率が高い傾向を示した.以上の結果から85歳未満の自立生活の在宅高齢者においては, 閉じこもりが要介護移行のリスク因子になる. 要介護のリスクファクターとしての閉じこもりの判定には外出頻度・「週に1回程度以下」を使用するのが有用である. さらに閉じこもり状態像において, 社会交流のないことは要介護移行により強く関連することが認められた.